せんきち

はちどりのせんきちのレビュー・感想・評価

はちどり(2018年製作の映画)
3.9
世評に違わず面白い。キム・ボラ監督はこれがデビュー作というがマジか。

1994年を舞台に描かれる平凡な中学生少女の物語。

主人公ウニは5人家族の末っ子で団地住まい。父と母は長男をソウル大に入れることしか頭になく自分に全く関心がない。ストレスのたまった兄から殴られても逆に自分が叱られてしまう。当然授業にも興味なく趣味のマンガを描く日々。そんな中、漢文塾にヨンジ先生という不思議な女性と出会う。

男尊女卑社会、学歴重視の社会構造が主人公を静かに追い詰めていく。そんな中、メンター(指導者)と出会うことによって少しだけ主人公が変わっていく。

世界で何度も描かれた青春ものの構造であるが、一番似てるのは『プレシャス』だろう。『プレシャス』ほど過酷じゃありませんけど。『プレシャス』は不幸のロイヤルストレートフラッシュみたいな映画だったからなあ。

ウニを演じたパク・ジフも良かったがメンターであるヨンジ先生役のキム・セビョクが素晴らしい。どこか厭世観漂う雰囲気と子供を子供扱いしない誠実さ。子供の憧れるどこか不思議な大人。それ故にクライマックスで起きることに涙するのだが。

パンフでパク・チャヌクが早く続編を撮って欲しいと書いてあったが同感だ。ウニが大人になる時、どう成長していくのか非常に興味がある。94年で中学生だから社会に出るのは2000年初めだから97年の通貨危機を通過してるわけだ。それは相当過酷であろう。観たいなあ。(本作の舞台が94年な理由はクライマックスで分かります。)
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