ナターシャロマノフという人間の結末を知っているからこそ、ずっと涙が止まらなかった。この順番でやられたら、どうにも切なくてたまらない。
アベンジャーズの中でのナターシャロマノフという人は、バラバラで聞き分けのないアベンジャーズを繋ぐことができる唯一の人だった。
繋ぎとめようという努力も一番してたと思う。
だからみんな彼女が好きだったし、「家族はいたのかな?」「いた。僕らだ」なんていうやりとりもあった。
アベンジャーズの中では、母のようでもあり、姉のようでもあり、妹のようでもあり、観客にとっても本当の家族のように思えるくらい、温かみを持った人物としてずっと描かれていた。
その描写は一貫していたと思う。
今回はそんな彼女のもう1つの家族のお話が明かされる。
たった3年しか一緒にいられなかったけど、血も繋がっていなかったけど、全てが正しく愛し合えたとは限らないけど、それでもたしかに4人は家族だったのだ、というのが会話の中に丁寧に込められていて、その描写でまた泣いてしまった。
姉妹のやりとりも、父娘のやりとりも、母娘のやりとりも、どれも自然で家族の体を成している。何気ないやりとりに思えるのに、それが全部家族の物語として機能している感じがした。
空気の読めない父親とドライな娘二人のやりとりなんかはかなり笑った。着地イジりとかも。
でもそうやってつっけんどんな態度や反抗の言葉などですれ違っていても、言葉とは裏腹な一人一人の思いが観ている私たちにはちゃんと伝わる。
それは安易なごめんねやありがとうの言葉ではなく、大事に持ってるアルバムや大好きだった歌などで表現される。
そして、ちゃんとそれらのやりとりが面白くもあり湿っぽすぎないバランスのよさ。
だから観ていて嫌じゃないのかなと感じた。
そして、ちゃんとちょうどいいところで暴力の波が押し寄せる。
ドレイコフの人をコントロールしようという思考や言葉で太刀打ちできないから暴力で訴えるところなども、とても生々しい。人間をモノとしか扱わない姿はシンプルにおぞましい。
幼い頃から選択権もなく女性としての機能も幸せな子供時代も奪われ、なおかつスパイとして人を殺してきた罪悪感を抱えながら生きてきたナターシャ。
同じ境遇であるのにナターシャからも置き去りをくらった妹のエレーナ。(このエレーナのキャラも末っ子感満載でかなりカワイイ)。
エレーナからのSOSがきっかけで徹底的にその過去と向き合うことを要求され、そしてそこから逃げずに戦う姿には感動した。
自分の子供は産めない彼女だからこそ、そして幸せな子供時代を奪われてきた彼女だからこそ、エンドゲームでの選択に説得力も増す。
こんなエピソードを持ってアベンジャーズと、(特にクリントと)接してきたナターシャなら、クリントとその家族をも守るために絶対にああするし、家族がいるクリントにはそれを止められない。
作品越しにこういうのをやってくるところとかはほんとに凄いなあと思う。あとから分かるってのが更にズルい。
まぁちょっと気になるところとしてタスクマスターとの決着はあれで良かったのだろうかとは思うけれども…。気づいたらうやむやに終わっていた感。ごめんねとわざわざ口に出さなくても良かったんじゃないの?とかも思ってしまった。
あと、全然関係ないけど個人的には冒頭で流れたsmells like teen spiritのアレンジは原曲より好きだった。
一応ラストはホークアイに繋がっていたけども、誤解を解いてエレーナにブラックウィドウを継承させていこうという心づもりなのかな?
今後も楽しみ。