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シー・ユー・イエスタデイのRのネタバレレビュー・内容・結末

シー・ユー・イエスタデイ(2019年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

自宅で。

2019年のアメリカの作品。

監督はステフォン・ブリストル。

あらすじ

化学の展示会に出場するため、タイムマシンを制作した天才高校生のCJ(エデン・ダンカン=スミス「ANNE/アニー」)とセバスチャン(ダンテ・クリッチロウ)。そんな折、CJの兄のカルビン(アストロ「ルース・エドガー」)が警察に射殺されてしまう。カルビンを救うため、過去に遡り、彼の命を救おうとする2人だが、過去に戻るたびに別の悲劇に見舞われてしまう。

Netflixにて、無作為に選んだ中から。

お話はあらすじの通り、所謂「タイムスリップもの」。ということで、タイムスリップ映画の代名詞といえば、みんな大好き(だが、俺は未だに未見!)の「バック・トゥ・ザ ・フューチャー」シリーズがあまりにも有名だが、なんと今作では2人の主人公の担任教師役であのマイケル・J・フォックス(「STILL マイケル・J・フォックス ストーリー」)が特別出演している(ちなみに吹き替えも三谷雄二!!)。

で、本作高校生2人組が主人公なんだけど、この2人がまぁ天才も天才でなんとお手製でタイムマシンを制作してしまうくらい頭が良い!!そのタイムマシンを使って高校の化学展示会に出場しようとするあたり、まだ無邪気な感じも見受けられて微笑ましい。序盤はそんな感じで高校生2人組の身の回りの日常を綴る展開。

で、舞台はブルックリンなんだけど、まぁーやっぱあちらのファッションはものすごく興味深い!!ストリートとヒップホップカルチャーがものすごく反映されて、アメリカナイズされたそのファッション、主人公2人は単色使いのアクセントが効いたダサオシャレ、兄貴のカルビンは黒を主張したシンプルながらも不良テイスト溢れる感じと夏らしい陽気な雰囲氣と相まって観ているだけで、勉強になるし、何よりみんな決まっててカッコいい!!

ただ、本作単なるタイムスリップ青春ものの側面だけで観続けていると痛い目に遭う。舞台は白人警察官による黒人青年の射殺事件が起こってから、少し経った年ということからもわかる通り、アメリカで始まった人種差別運動「Black Lives Matter(黒人の命も大事だ)」が全体のテーマ。ということで、序盤からCJとその兄貴のカルビンが口論してると白人警察官2人がすっ飛んできて、ものの数秒で険悪ムード、カルビンの友だちも「(スマホで)撮ってるからな!」と牽制するなど、お互いにかなりの緊張状態が伺える。

で、そんな序盤のシーンとその後の意外に仲が良いCJとカルビンの兄妹愛のシーンが流れて嫌な予感がしていると、なんとカルビンが強盗と勘違いされて、白人警察官たちに射殺されてしまう。

で、兄貴カルビンを救うため、CJとその親友のセバスチャンはタイムスリップすることきなるんだけど、きっかけがそんな感じだから、タイムスリップが始まってもテイストとしてはめちゃくちゃ重い。

はじめてのタイムスリップではCJの元彼の不良に絡まれて、射殺までのタイムリミットに間に合わずにまた兄貴死んじゃうし、2回目のタイムスリップではCJが考えて、そもそもの要因だったコンビニ強盗をとっ捕まえればいいんじゃね?とコンビニに向かうも、そこに居合わせた元々の時間軸のセバスチャンが強盗との揉み合いで撃たれて死んでしまう。しかも、そこでのセバスチャンが死んじゃったからタイムスリップしたセバスチャンまでもいないこと扱いされて、その場で消えてしまう鬱展開…。

いや、重すぎだろ…。

つーか、今作Filmarksの評価がめちゃくちゃ低い一つの要因として、この2人、特にCJが天才の割にはめちゃくちゃイライラする行動しかとらなくて、いやコンビニあぶねーって散々セバスチャンが釘刺してるんだから、もうちょい警戒しろや!!と観ている俺もフラストレーション溜まりまくり。

セバスチャンが消えてしまった後、泣きながらもとの時間軸に戻るCJなんだけど、めちゃくちゃワームホールから未来感溢れる感じのシーンなのに、本人号泣で観てられんかった…。タイムマシンも壊れちゃうし。

ただ、元の時代に戻るとそこにはセバスチャンが亡くなった代わりにカルビンは生きてて、勘付かれたカルビンの後押しもあって、再度タイムスリップに挑むことになる。

その際、CJを兄貴らしく勇気づけた後、タイトル通り「See You Yesterday(昨日また会おう)」と切なげに言葉をかけるカルビン、死亡フラグにしか感じねぇよ…。

で、クライマックスのタイムスリップ、セバスチャンも生きている時間軸の中、不良との鉢合わせも交わしつつ、なんとかカルビンの元に行き着く2人なんだけど、タイムスリップしてきたこと、自分がこの後殺されることを信じないカルビンとまたも口論していると、白人警察官登場。

で、まぁこの後のシーン、思い出すだにイライラを超えて、鬱屈した記憶が蘇るんだけど、まぁはじめっから臨戦状態の警察が「身分証を出せ!」とほざいて、渋々身分証を提示、身分確認している間に少しでもおかしな挙動をすれば、未成年、子どもであっても問答無用に地面に伏され、挙句の果てには「こいつ銃を持ってるぞ!」とやはり最後はカルビンを射殺。

マジではらわたが煮えくり返る想いというか、日本人でこの「BLM運動」の時代背景を全然わかってない俺からすると意味がわからない。もうはじめっから黒人だったら問答無用に射殺しても構わないと思ってるんじゃないかってくらい、もはや殺しにかかってるよな?確かにカルビンもポケットからスマホを取り出すという、疑われてもおかしくない挙動はしたかもしんないけど、こんな結末見たくなかったよ…。

という感じで何度過去を遡っても、誰かが死ぬ救えない結末を辿る本作。セバスチャンにも自分が殺されてしまったことがバレて仲違いしちゃって、それでも兄貴を救いたいCJは1人過去に飛ぶ。

ラストは過去を救ってめでたしめでたしというゴールを描かず、その先に救えない結末が何度待ち受けようと、それでも奔走するCJの姿で終わるんだけど、ここは黒人差別が未だに根強くある=「戦いは終わっていない」とメッセージを投げかけられているようで終わり方としては不満ではあるけど、その意図はヒシヒシと伝わるラストだった。

これ、作品のストリート感溢れる作りと強いメッセージ性から絶対どっかで絡んでるなーと思ったら、やっぱり製作にスパイク・リーが絡んでた。どうやら監督もリーの愛弟子らしく…なるほどね。

という感じで伝えたい想いはわかるんだけど、タイムスリップものとしてはあまりにも重すぎな作品、ポップなカラーで見始めると辛いことになります。
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