阪本嘉一好子

エコー・イン・ザ・キャニオンの阪本嘉一好子のレビュー・感想・評価

5.0
1960年代のフォーク・ロックの起こりはロスのローレル・キャニオンが始まりであったらしい。そこにはブライアン・ウイルソンの率いるビーチボーイズはすでに住んでいて、ロジャー・マッギン、クロスビーのザ・バーズが移り住み、カルフォルニア・ドリームのヒットを放ったママ&パパス、それに、 スティルスとニール・ヤングがいるバッファロー・スプリング・フィールド。そして、英国からもビートルズ、エリック・クラプトンなどもここに集まってきたと。お互いが影響しあって曲を作っている。現在なら、似てるよ、コピーだねと言われ、著作権の問題に発展して大騒ぎになるかもしれない曲づくり。

https://www.youtube.com/watch?v=pKP4cfU28vM バーズのターン、ターン、ターン、で始まり、この曲、生きていくのが軽くなるねえ。

https://www.youtube.com/watch?v=u6JhTSzZXzg The Byrds -
The Bells of Rhymney (1965)

ローレル・キャニオンの60年代のドキュメンタリー/コンサートだとはタイトルから想像できなかった。ローレル・キャニオンはロスのハリウッドの近くにある有名な歌手の住処で、YouTubeでここの芸能界のゴシップのようなものを見たことがある。これとは大違いで、ボブ・ディランの息子、ジェイコブ・ディラン(Jakob Dylan)の製作力に感嘆、でも、彼のインタビューの下手さには最初は呆れていたが、そのうち、これは感情を表現できない人の自然の姿そうなので、かえって、好感が持てた。それより、聞き手に回っている人だと思うが。彼の曲をもっと聞こうと思わせるような人だ。今はBuffalo Springfield でもなく、The Byrdsでもなくジェイコブが演奏する60年代の曲を楽しんでいる。

このドキュメンタリーは私にとって中身が濃くて目が離せなかった。ジェイコブが1960年当時の歌手、ロジャー・マックギン、デビット・クロスビー。スティーブン・スティルス、ブライアン・ウイルソン、ミッシェル・フィリップス、リンゴ・スターなどにインタビューをする。そこに、70年代過ぎまたは60年代後半にローレル・キャニオンに参入したかと思われる、ジャックソン・ブラウンやトム・ペティーたちの回顧録的なインタビューが加わる。トム・ペティはここを『伝統的なパラダイス』だと言っている。ジェイコブ・ディランがバーズ、バッファロー・スプリング・フィールドなどの曲の再演をロスのオフューム劇場で(Orpheum Theatre)で開く。最初、監督のアンドリューがステージでジェイコブと二人の共作だと。60年代のフォーク・ロックのアーカイブとジェイコブのグループの演奏をうまく取り入れて合わせているドキュメンタリー。そこには最近、影響を受けた歌手、ベック、フィオナアップルなども加わっているが、私はこれらの影響を受けた人々の持ち歌を全く知らない。60年代はインターネトがなかった時代だから、今にすると稀に見る、インフォメーションがぎっしり詰まっている映画だ。

個人的にはビーチ・ボーイズ、ザ・バーズ、ママ&パパス、バッファロー・スプリング・フィールドを60年代後半以降になって聞いていると思う。クロスビー・スティルス・ナッシュの1969年Crosby, Stills, Nash & Young - Teach Your Childrenからフォークロックを聴き始めて、前に戻って聞いているから、80%の曲は馴染みがある。特にバーズが好きだったが、ビーチボーイズはサーフィン音楽だと思っていた。私もそうだが、ジャクソンブラウンもこのインタビューで彼らの曲を『つまらない』と思っていたらしい。 しかし、Pet Sounds で見直したようだ。 これがアルバムhttps://www.youtube.com/watch?v=Mh_yhTyae08 このアルバムの歌詞をよく読む必要があると思った。

最後のシーンが一番好き、https://www.youtube.com/watch?v=POKaloe7HZ4 Expecting To Fly Jakob Dylan and Regina Spektor この曲の、最後がビートルズのサージャント・ペッパー・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンドの『A Day In The Life』途中や最後ように終わる。その後、ニール・ヤングがガラスの向こうで『What's Happening』を演奏している。しかし、歌はジェイコブがギター弾いて歌っていて、この曲はデビッド・クロスビーが作った曲。 当時はこうやって混ざり合って、アイデアを共有したりして、音楽を楽しんだり、アルバムにしたりするのが自然なコネクションだったという意味が含まれているから好き。『この曲作ったんだ、聞いてみない?』なんて近所のアーティストをおとずれるなんて、今の時代に想像できないなあ。協働シーンがロスのサンセットスタジオとロンドンのレコーディングセッションの場でも見られた。ユニークな制作だね。この時の曲はBuffalo Springfield の『Questions』だったかな? 

また最初に、ジョイコブとトムが楽器屋に行って、ロジャー・マックギンがジョージ・ハリソンから影響されたギターを手にとって弾くところが、伝説を伝えているという感じがする。
最後にはトム・ペティーに捧げると。

https://www.youtube.com/watch?v=AZoK_G8Qsw0 (Jakob Dylan and Neil Young) - What's Happening
https://www.youtube.com/watch?v=3V8VvEzuQ6Y  バッファロー・スプリング・フィールド
For What It's Worth & Mr. Soul

必見のドキュメンタリー
*Tom Petty and the Heartbreakers: Runnin' Down a Dream : トム・ペティ
*ジャクソン・ブラウン/ゴーイング・ホーム: ジャクソン・ブラウン