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ディエゴ・マラドーナ 二つの顔のmasayaのレビュー・感想・評価

4.1
 貧民街からやって来た青年ディエゴと、史上最高のサッカー選手マラドーナという二つの人格。天才の持つ二面性。繊細で人間的な本来の彼を蝕んだのは何だったか、栄光に包まれていた彼を何が破滅に追いやったか。英雄の光と影の強すぎるコントラスト。

 類まれな才能はどうしてもその存在が政治性を帯びてしまう、彼の所属する場所、ブエノスアイレスの貧困地区や世界的に孤立していた母国アルゼンチン国民、イタリア南北格差に苦しむナポリ市の人々にとって彼は実像以上の意味を持った。彼らは英雄マラドーナを崇拝し、それ以上に縛り付けた。

 W杯のマラドーナといえば、今でも語り草になっているメキシコ大会イングランド戦の2ゴールが象徴的で、この映画でも長い時間を割かれていたけど、彼の物語としては90年イタリア大会の準決勝、開催国とのナポリでの対戦がより強く印象に残った。天才は悪運すらもこれ以上ない形で引き寄せてしまうのか。
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