スワヒリ亭こゆう

Winnyのスワヒリ亭こゆうのレビュー・感想・評価

Winny(2023年製作の映画)
4.5
僕は東出昌大が嫌いでした。
『桐島、部活やめるってよ』で映画に出演する前から雑誌などで顔は知っていて彼が男前なのは分かっていました。そんな東出昌大を『桐島、部活…』で初めて役者として見た時に、こんな良い映画に1人だけ素人臭い演技をする彼が嫌いだと僕は認識しました。
その後『クローズ』シリーズに出演したりと何かと僕の好きな物に関わってくる彼に嫌悪感を抱かずにはいられませんでした。
東出昌大がその後にプライベートで過ちを犯し、ネットで散々叩かれて、家族を失ってしまう…
僕は映画のレビューを書く時に映画に関係ない俳優のゴシップとかはあまり書きたくないんです。
そういう物は映画が面白ければ、どうだって良いので書かない様にしてます。
だけど、本作『Winny』で東出昌大が演じた金子勇という人を知れば知るほど、東出昌大のゴシップがオーバーラップしてしまう。

愛する家族を失って打ち拉がれたであろう東出昌大さんは今は人里離れた山で狩猟をして暮らしているというネットニュースの記事を目にしました。
そのネットニュースにはコメント欄があり今だに彼の不倫について叩いている人がいます。
もう良いじゃないか…もうこれ以上は可哀想すぎる。彼が家族にした事は他人が言う事じゃない。他人の不倫に対して怒るという感情は恐らく殆どの人にはなくて、潜在的な嫌悪感を抱かせているタレントがバッシングの対象になるんだと思います。
東出昌大が嫌いだ…僕以外にも沢山いたのだろう。

winnyというファイル共有ソフトを開発して、それが2ちゃんねるなどで違法な著作権侵害や児童ポルノなどのやり取りに使われる。
そう言った違法な事をwinnyで出来てしまうがために本作の主人公・金子勇(東出昌大)は逮捕されてしまいます。本作で壇弁護士(三浦貴大)が言っていた「殺人事件で使われたナイフ。コレを作った人は罪に問われるのか?」
この言葉はとても本作にとっての問題点を的確に表してます。
ですが金子氏がどうしてwinnyを作ったのか?
その辺りを知りたかったんですが、本作を観ると、とても腑に落ち、金子氏の名誉回復の一端を担った作品になっていました。
実録モノの映画ですが、実に素晴らしい出来栄えだと思いました。
何より東出昌大さんが演じた金子勇氏が凄い良かったです。
先程も書きましたが東出昌大自身のゴシップが本作の金子勇氏の役に対して影響を与えていると思います。それを思わずには見れないと言った方が正しいのかもしれません。
やっぱり僕は東出昌大が気の毒だと、同情せずにはいられません。どんなに嫌いな相手でもここまで理不尽にバッシングされていたら、僕は同情するしバッシングは止めてあげてと思う。
金子勇氏への同情と東出昌大への同情が僕の中で混在している。それは東出昌大が役者として金子勇氏になりきっているからだ。本作の中でまた叩かれている金子氏と東出昌大が一体化しているからだ。
もう一度書きますが、普段ならば役者の好き嫌いを僕は書かない。だけれどもここまで作品にシンクロすると書かない訳にはいきません。書かずして僕が本作のどこに惹かれたかを説明出来ません。
東出昌大という役者を根底から見直さずにはいられません。彼の演技は素晴らしかった!

本作の途中、金子氏の裁判と並行して描かれている愛媛県警の警官・仙波(吉岡秀隆)という男の話。
一体、どういう事か?話が進むにつれて愛媛県警の腐敗を訴える仙波氏のエピソードが僕はとても怖く感じました。
国家権力に立ち向かう事の恐怖が垣間見えて、winny事件以上に恐さが際立ってました。
このエピソードを挟む辺り、実に面白くて作品により深い作品になってます。

本作を観て最後に東出昌大という俳優が僕は好きになりました。彼の才能を潰す事はあってはなりません。これからも俳優として続けてください。その為にも東出昌大さんを応援していきたいと思います。