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福岡のmasayaのレビュー・感想・評価

福岡(2019年製作の映画)
4.1
 謎めいた少女ソダムに導かれ訪れた異国の地に待っていた28年ぶりの再会。失われた年月は他の人には理解し難いだろうし、暖め続けた想いは何も残さない虚しいものかも知れない。だからなんだと言うのか。そこにある人生の掛け替えなさは誰にも否定できない。彼自身にも。

 この外国映画が見つめる「福岡」は、街と街を繋ぐ幾つもの橋であり、道端に植えられた花々であり、飛行機、角打ち、うどん屋、隠れ家のような喫茶店、どこからでも見える電波塔だ。主張の強いラーメン屋台や明太子や野球ドームではなくね。ずっとこの街の本質を捉えていて見事だった。
 劇中の福岡では、言語の違う人どうしが互いの母国語で意思を通わせ合う。言葉や文化、時の流れ。それら全てが人と人を隔つのではなく繋ぐ為だけに存在していたら。この映画は幻想だ。でも福岡なら幻想で終わらないかもしれない。それこそがこの街の存在してきた理由であり、可能性なのだから。

 日本の劇場では初上映とのこと。入場時にロケ地マップをいただく。博多、天神、中洲、大名、劇中至るところ見たことある景色に喜んでたら、まさかまさかのおれんちの前が出てきた。びっくりして腰が浮いたよ。いつも通勤で歩いてる道、最寄りのコンビニに行く時通る歩道橋をオスカー女優パクソダムが歩いていた。なんということだ・・。

 映画上映後、チャン・リュル監督のリモート舞台挨拶があった。最初中国語で話されていたのでなんでだろ?と思ってたら中国吉林省出身の朝鮮族3世なんだそう。いろいろ驚く。日本語も韓国語中国語も、色んな国の人が自分のことばで話し通じ合える不思議な町があったら素敵だなと思う。
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