このレビューはネタバレを含みます
やはり小木さんの深爪のクダリが個人的には一番ぶっ込んでて面白かった。
望遠で長い階段下から高杉さん、六角さんをとったショットの奥行き感が一番好きだった。
ドローンの景色は、美しすぎて合成に見える不思議あるあるなショットだった。壮観だった。
監督の映画はパロディ調が殆どだけど、バカはバカでもこういうバカさもあるんだな、と思った。
上地くんは主役だと熱血さが先行して暑苦しいけど、脇役だと光るなぁと感じた。キャラとして成立してた。
会社の各部署にたまにいるレジェンド的存在が、いるよねー、と共感できた。あの役は六角さんがはまっていた。
も含めて、キャスティングが絶妙だった。豪勢だけど、監督にしては珍しく色物じゃないというか、力強かった。
部分的な夢オチのクダリは若干長く感じた。そこは、何を見せたいか?が先行してたように感じた。
積算からコストダウン検討を物語の最後の難関にもってきてもよかったが、
ずっと2時間リアリティ路線(実話ベース)よりも、あくまでファンタジーに仕上げたかったのかな、という製作側のコンセプトを感じた。映画だからできることだし、エンターテイメントだし。
この空想劇によく感情移入してやりきれたなと、役者のかたのすごさも感じた。もぐらの山田さん、滑舌よすぎた。高杉さんも熱入ってた。
いろんな面で感情移入ができる、取っつきにくいのに、取っつきやすい。原作、ないし、前田建設ファンタジー営業部さんのコンセプトをそのまま映画にしたような、見てる人も楽しめる、ウィンウィンがハマッた映画だった。面白かった!
オープニングのキャスト紹介かっこよかった!
________
【ここからは映画の話からは脱線。今の時代について】
2020年にして、ボランティアで自宅で仕事って、おい!と思ったけど、勿論原作は少し昔の話だからそれはさておき、
そこって大事なポイントだなぁと思った。なぜ、ファンタジー営業部が成り立ったかって、仕事馬鹿が集まって、熱が熱を生んだからだ。
家でも仕事するのを、今のご時世では一般的に悪だと言うけど、家で好きなことに没頭してるのはどうだろう?なんかよくないかな
働き方改革という防御壁が出来て、ワークライフバランスという名目のもと、人が守られる仕事環境が出来た。
逆に言えば、働きたくても働きづらい、上からの強制力のない、帰っていいよ、という甘い誘惑がある時代になった。残ってると注意され、個人面談では働き方をダメ出しされる。
何か一つの疑問に熱中してると、効率性を問われ、仕事の進め方を変えさせられる。コストの話をされて、そんなものは捨てろ、と言われる。
昔の人は、俺らの時代は大変だった、というけど、その言葉には、無意識的に、それを乗り越えた誇りが含まれる。
強制的に長時間労働を強いられた。
やりたくもないことでも延々とやらされた。今と比べれば間違いなく効率は悪かった。情報も少なかったから自分達で考えて答えを見つけていかないといけなかった。
言わせてもらえれば、若い世代は、自分で仕事への力の入れ方を選べるようになってしまった。コントロールしないといけなくなってしまった。
それには、まず何が好きで何が嫌いかというものさしが必要。
その上で、今日はもう帰っていいよ?あんまり無理しないでね、甘い誘惑が至るところにちりばめられ、そんな誘惑と戦い、また「べき論」や一般論とも戦いながら、それでもやると決めたら、自らを追い込まないと、好きな分野で昔のレジェンドのような突き詰めかたができなくなった。
効率的にやれば云々という、海外の働き方を模したような仕事の仕方の主張もあるけど、まず前提として、外国人は単に働きたくないから早く帰るという話。帰りたいという自己主張も強いし、契約書で守られてるし。
けど、海外企業を育てたのはそういう人じゃなくて、やっぱりオタク的で、昼夜問わずパソコンに熱中してたような輩。
企業の、というより、個人の競争力を考えたいけど、そこにはやはり費やした時間が与える影響は大きい。
だけど、今はそれをまずは強制されない、むしろ阻まれる時代。
選択の自由は苦難の道。
なにも考えなくても力をつけてもらえる時代は終わり、自分で力の付け所を選び、方法を考えなければいけなくなった。
自己理解と自制力が求められる。
インターネットとグローバリゼーション、なんていう固い言い方をするけど、
ともあれ、そのせいで競争相手も圧倒的に多くなった。昔とは桁が違う。乃木坂のオーディションなんて4万人とかで始まり、坂道全体オーディションでは10万人を越えてる。
こんな大変な時代に結果を残すには、甘い誘惑、働き方改革という冷たい防御壁を打ち破る自制力か、あるいはバカになれるほど夢中になれる対象とエネルギーが必要。
馬鹿は面白いし、馬鹿は強い。
選べる時代になったからこその難しさ。
この手のお話、夢中になっている人を見て惹かれるのは、それを求めている自分がいるからだと思う。
本作に映る人から、そんな事を考えさせられた。働き方改革、時代に惑わされるな。自分で選べ、と。一生は一回だけ。