くりふ

レディ・マエストロのくりふのレビュー・感想・評価

レディ・マエストロ(2018年製作の映画)
4.0
【指揮棒もっても、女はつらいよ 】

好みの題材で、時間合ったので劇場へ。139分ほぼ勢いよく、終盤ホロリのいい映画でした。

伝記というより、史実を今風ネガ視点から、ポジにリビルドしたおんな一代記。波乱万丈すぎてあちこち掘り込み不足は感じるものの、こういう前向きな物語はいいね!

ヒロインは年寄ばかりに囲まれるが、これは青春サクセスストーリーでしょう。

モデルのアントニア・ブリコは女性指揮者のパイオニアと言われるが、ググると日本語では中々、情報ヒットしない。…という状況に苦笑い。

座りが悪い邦題もギモンだが、主演クリスタン・デ・ブラーンが一旦、すべてを吹き飛ばしてくれる。本人より美人だが、顎の尖りは似せてきたね。見事嵌って、始めと終わりで輝きが違う。

ラブ・ストーリーは突然に…の安直さ、指揮者に必要なコトが判りづらいこと、成功物語の常で、成功すると物語の失速を生むこと…などを弱点に思いましたが、美点が大きいからそう気にならない。本筋はユルイが、名セリフなど投入し、要所で物語を締めていますね。

脇役も効いてます。特に、出自にある秘密をもつロビン。明らかに現代だからこそ登場するキャラでしょう。男性優位の考えに染まって身動き取れない彼氏も、要の存在として悪くない。悪い奴じゃないよね。

相変わらずクラシック音楽には疎いですが、物語が流れる中ではお!と思う選曲がいくつもありました。指揮者デビュー戦では思わず、涙腺ゆるまされた。

シュヴァイツァーのパイプオルガン…彼とのエピソードにも驚く。成程、そういう特殊な縁を持つ女性だったんですね。

指揮者の伝記と聞けば堅そうだが、全体、リアルではないが“論より情”で仕上げている。これはシネコンにかけても充分、アピールできると思うよ。

大人の事情もあるでしょうが、何故そう売らないのかな。『ビリーブ 未来への大逆転』を見た時も思ったけれど、日本もこういう女性をもっと、映画で発掘しようよ。で、大人を泣かせてよ。いつまでもJKの涙腺ばかり狙っていないで。

<2019.10.9記>
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