Ryan

クイーン&スリムのRyanのレビュー・感想・評価

クイーン&スリム(2019年製作の映画)
4.1
「俺は世界を変えたりしない」


ストーリー
初デートの帰り道、警官から停車させられ、難癖をつけられたカップルのスリムとクイーン。いさかいの末に警官を死なせてしまう。楽しい夜は一転、必死の逃避行が始まる。


主演 ジョディ・ターナー=スミス
   ダニエル・カルーヤ
監督 メリナ・マツォウカス


こんな映画観たことない。
色使いや音楽、黒人カルチャー等全てが斬新で全てに啓発的でパワフルさを感じた。

緊張感の作り方が抜群に上手い。
それまでは楽しそうだったシーンに急に緊張が走り、解けたと思うと予想だにしない展開で緊張を作る。
"アメリカに住む黒人"の常に命の危険と隣り合わせの緊張感が我々観客にも伝わってくる。
想像を絶する緊張感に日本人は不慣れすぎるとも感じた。

世界中で様々な逃走劇映画はよく見かけるが、今作が圧倒的に違う点は"アメリカの日常を逃げる"である。
他の映画ではあまり観られないアメリカの庶民的な家や街並み、何もない道路、路肩に駐車するパトカー、ありふれたBAR等アメリカ人にとっては見慣れたものかもしれないが、我々アメリカに行ったことのない者からしてみると「イメージ通りのアメリカ!」と「若者が命の危険を常に感じている」というのが非常に痛いほどわかる。

だからこそ、彼らの静かな逃走劇に目が離せず"黒人コミュニティ"に羨望の眼差しを向ける。
また、現代社会が抱える問題を深く掘り下げており感情移入しすぎて「これ映画だった」と終わって気づく。

隠れ名作。
ゲームや映画でしか知らない世界を身近に感じることができ、幸せである。
Ryan

Ryan