てづか

少年の君のてづかのレビュー・感想・評価

少年の君(2019年製作の映画)
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会社の先輩に誘っていただき鑑賞。

いじめ問題を扱っているのはそうなんだろうけど、ふたりの孤独な少年少女の真っ直ぐな恋愛を描いた映画でもあったように思う。むしろそっちがメインにすら思える。

セリフ多めだとは思ったけど、それまでたくさん言葉を交わしてきたふたりが1番大事な面会のシーンでは何も言葉を交わさない、という一点のみが本当にわたしの胸を打った。
その無言のやりとりにどれほどの思いが詰まっていたか。無言のシーンはどれも感情が伝わってきてすごく良かったと思う。

主演2人の表情も素晴らしかった。決してオーバーでなく、自然体で、でも繊細で。堰を切ったように溢れ出る涙があらわすのはそれこそ本当に純粋な愛情ってもんじゃないのかな…。


と思うと同時に、正直途中で「いじめ問題どこいった?」っていうのと、「なんか長いなあ」という感情も同居してしまう。

ただ、いじめ問題に関しては、ひとつの答えとして、大人じゃないと子供は守ってやれないというのが提示されていたのかなとは思う。

この映画でふたりの子供を救うのは大人であるチェン刑事だ。

シャオベイは子供なりにチェンを守ろうとするけど守りきれない。それでも、思いだけはどこまでも真っ直ぐで。ふたりともお互いの愛情だけは信じあっていて。だからそれがたとえ間違った道でも突き進む。道の行方も分からないのに。

それを導いて助けてやれるのは大人だけ。大人がその仕事を放棄してしまうと、助けられるものも助けられなくなっちゃうよ、って話かなと個人的には思った。

言うても、いじめは無くならない。
人間は、子供は、そんなに美しいものでもないからだ。子供って、親や先生とかの影響も多大に受けるもの。
実際大人たちの世界も競争意識が強かったり、自分たちのルールから外れた人のことは排除したがったりするしいじめとか全然あるからそういうところの影響も受けるんだろうと思う。

でも子供ってもっと大きな「社会」というものがかけてくるプレッシャーになにより影響を受け、いとも容易く壊れてしまうものでもあるんだと思う。そして、それで生まれた切迫感や鬱屈とした感情をいとも容易く他人に向けてしまえるのも子供なんだろうとも思う。

実際に映画の最後にもあったように、国をあげて対策したとしても無くならない。

だから目の前で苦しんでる子供を、大人が見捨てたらいかんのだと思う。
無くならないと分かっているなら、苦しんでいる子が目の前にいることから目をそらすな!的な…。

映画のラストにもあったようにただ寄り添って一緒に帰ったりするだけでもいいから、苦しんでる心を見ないふりしないとか無関心であったりしないというだけでも、たすけになれるきっかけくらいは作れるんじゃないかな…というラストに思えた。
とにかく見ないふりをするなよと。
お前も一緒に苦しめよと。
そういうメッセージかなって。
それがこの映画が提示したひとつの答えなのかなと。

全然、わたしの解釈は間違ってるかもしらんけど。そういう風に感じてしまった。


受験戦争の厳しさも背景にあるものとして、数え切れないほどの答案用紙の束のひとつをクローズアップしてくるところとかは、「この中の一人一人にこんなエピソードがあるかもね」という含みにも思えて良かったなあと思った。

ただ、なんか長いなぁというのは気になった。
テンポが悪く思えてしまったのは色々あますことなく説明しておきたそうな感じのシーンが多かったからかな?



中国のどこか薄暗い街並みやそびえ立つビル群などの光景は物凄く好きなので風景の撮り方とかはすごくカッコイイなと感じたし、その引きの画のなかにぽつんと立ってたり歩いてたりする女の子のカットとかはあの子が感じてる孤独感が伝わってきて素敵だなあと思った。

ふたりの歩く時の距離感が最後まで変わらないのもすごく素敵。

お互いに信じあって「あんな人知らない」と嘘を貫き通した展開も好きだった。

シャオベイが捕まるシーンは「悪人」のラストシーンみたいで割とすき。あそこではじめてチェンのことを「好きな子」って言葉にするのもロマンチックだなと感じた。

なんかふたりのラブストーリーは全体的に夢小説とか少女漫画みたいでちょっと気恥ずかしくなるところもあるけど、主役のふたりの顔というか面構えが良くてとっても画面映えする感じもしたのでまぁいいのかな。

人の生死がかかっている物語だしそういう大事な問題なので、そこはもっと徹底していじめと自殺について語ってくれても良かったのかなとは思っちゃうけど。


あと、共産主義なはずなのになんであんな学歴社会みたいになっちゃうんやろう。というのがよく分からなかった。
てづか

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