あおき

ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバーのあおきのレビュー・感想・評価

4.2
「燃やしたいのは世界だ」

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チャドウィック・ボーズマンの逝去により脚本が大きく変わった「ブラックパンサー」の続編。
その経緯を少し知っていればMCUをほぼ観てなくても(たぶん)楽しめる作品になってて、単品での完成度は最近じゃ1番高い気がする!

まず映像が美しすぎてそれだけで最高〜〜に眼福。ワカンダの伝統的×未来的都市は勿論、新たに登場するマヤ文明を土台にした「深海帝国タロカン」の美しさに癒された!!マヤ文字から始まるテロップや心地良いサントラも神がかってる。


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「怒り」を繊細に描いた物語だと思う。

ワカンダ(=アフリカ系アメリカ人)とタロカン(=メソアメリカ先住民)に共通する、利用され迫害された民族が秘める怒り。そして血を分けた家族の急逝に対する運命──ひいては世界への個人的な怒り。
複数種の怒りがクロスオーバーすることで生まれる闘争…。よくよく考えるとこれ、実はシビル・ウォーや前作からも共通したテーマであると気付かされる。

前作ではキルモンガーというヴィランが、個人的かつ政治的な怒りの体現者だった。
本作ではワカンダ全体──特にティチャラと個人的な繋がりを持つ者達が心を砕かれている最中、追い討ちの如く先進国に虐げられるシーンで映画が始まる。

王はこの残酷な世界に歩み寄った。
しかし世界の利己的な迫害は終わらない。
平和への願い、国のプライド、そして大切な人の死への恐怖。これらが“天秤”にかけられたような、不安定さ剥き出しのワカンダメンツには目も当てられない。つらい。



そしてタロカンとの邂逅。彼らは世界に怒り復讐を成し遂げんとする、ワカンダが歩んでいたかもしれない、或いは歩み兼ねない未来の姿。ネイモアとシュリの間に生まれるシンパシーは唐突の様に見えるけど、二国と二人の歴史からして必然とも捉えられる。
しかし平和を施せる範囲の相違で対立する二人。そしてシュリを失う恐怖に狼狽えるラモンダやナキア…前述の“天秤”が激しく揺さぶられてゆく。



混乱の末、すでにボロボロなワカンダを待つ新たな悲劇。それはシュリが「怒り」に軸足を置く決定打になってしまい、物語がそのままクライマックスへと歩んでゆく。

シュリは「ブラックパンサー」に成れたのか?それとも………


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怒るべき国どうし/人どうしの共鳴と対立。
絢爛なヒーロー映画っぷりに胸を熱くしながら、不毛な闘争の虚しさに胸を潰される………感情がぐちゃぐちゃになりました。

ありがとうございました。


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アイアンハートを登場させる脚本は悪くないけど、スーツ戦闘までやるならもうちょい細部の説得力が欲しかったな。ぜんぜん可哀想だよあの娘。

オコエ可哀想すぎる。
あおき

あおき