たけちゃん

ハリエットのたけちゃんのレビュー・感想・評価

ハリエット(2019年製作の映画)
4.5
みんなの居場所を用意するわ!


ケイシー・レモンズ監督 2019年製作
主演シンシア・エリヴォ、ジャネール・モネイ


昨日はおつかれちゃんで、自宅ムービー。
朝、レビューをあげたようにネトフリオリジナルの「オールド・ガード」を観たんです。それはそれで良かったけれども、やっぱり劇場が好き。
ってことで、今日は朝から三本立て。
こちらでは公開されたばかりの作品よ。
ちゃんと寝たから元気だったんで、まだ行けたけど、夜は町内会の役員会があり、三本まで( ¯−¯ )フッ
三本観た1本目が、この「ハリエット」でした。
実は、事前にな~んにも調べないで観たので、びっくりしちゃった!
今作、実話でしたΣ( °-° )ワオ

勉強不足だったなぁ。
全然知らなかったよね。
アフリカ系アメリカ人で、初めて肖像が米ドル紙幣に描かれることになるアメリカ人なら誰もが知る人物だそうです。トランプ、早く印刷しなさい!


【ハリエット・タブマン】
1820年(1821年説もあり)、メリーランド州出身の奴隷。
メリーランド州はワシントン州に隣接する州で、最大都市はボルチモアです。ここは北部に入るんだけど、まだまだ奴隷が多い時代。
ハリエットが生まれた時の名はアラミンタ・ロスで、愛称はミンティ。
映画でも描かれていましたね。
奴隷監督からの虐待で、頭部に受けた殴打により、生涯、後遺症に悩まされました。
1847年に脱走してフィラデルフィアに逃れ、奴隷解放運動家となる。特に、「地下鉄道」という奴隷解放の手助けをする組織において「車掌」として成功し、1度も捕まることなくリーダー的存在となった。
アメリカ南北戦争が始まると看護師や北軍のスパイとして活動し、史上初の女性指揮官として兵を率いたりもした。映画では兵士を前にして、素晴らしいスピーチをしていましたよね。
1913年に肺炎で死去、93歳でした(映画では91歳って言ってたけどね)
すごい人でした!








さて、映画です。
いや~、映画も本当に素晴らしい作品でした!
ただただ、ハリエットの人生に感嘆です!
上のバイオグラフィで書いたようなことが、そのまま映画で描かれているんですが、あまりにもすごくて、実話とは思えなかった。
しかも、そんな生い立ちなのに、93歳まで生きるんですよ。驚きです!

こうした映画で、悲劇的なラストでなかったことに、本当に感動しました。嬉しかったね。

色の使い方も良かった。
オープニング、ハリエットのドレスも青。
画面も青基調で、悲しみや静謐な感じね。
後半、ハリエットが戦い、自由を勝ち取る時は、希望に満ちた見事な赤と朝日。
鮮やかでしたね!



主人公のハリエット・タブマン(ミンティ)を演じたのはシンシア・エリヴォ。
あの「カラー・パープル」をミュージカル化した作品で主人公のセリー役でブロードウェイ・デビュー。トニー賞主演女優賞などを受賞しています。
今作でも素晴らしい歌声を披露していて、エンディングの「Stand Up」はシンシア・エリヴォの主演女優賞と共にアカデミー賞歌曲賞にノミネートされました。
アカデミー賞での歌唱をYouTubeで見ましたが、素晴らしいのなんの。これはぜひ、チェックしてみてね!
でも、シンシアがイギリス人だからハリエットを演じるのはおかしいと非難されたというので、映画を観る前に非難するのは本当にイカンと思いましたよ( ˘ ˘ )ウンウン


フィラデルフィアでハリエットを助けるマリー・ブキャナン役はジャネール・モネイ。
あの傑作「ドリーム」で活躍する3人の黒人女性のうち、黒人初のエンジニアとなったメアリー・ジャクソンを演じた方です。「ドリーム」のレビューでも書きましたが、ジャネール・モネイはシンガーとしても素晴らしく、今作では歌が使われなくて、残念でした。最初、クレジット見るまでは「Stand Up」を歌っているのがジャネールかと思ったもんね。


フィラデルフィアで奴隷解放活動をしているウィリアム・スティル役のレスリー・オドム・Jrは知らない方でしたが、若き日のデンゼル・ワシントンにも似た素敵な俳優でしたね。今後に期待大!


地元でミンティを助けるグリーン神父を演じたヴォンディ・カーティス=ホールって、監督のケイシー・レモンズのご主人なんですよ。経歴調べたら「ダイ・ハード2」でテロリスト側の兵士役で出ていました。写真見て思い出した(ˆωˆ )フフフ…
それにしても、説教で歌うゴスペルが素晴らしかったよね。歌も上手でした!はぁ、ゴスペル大好き!ってことで……






最後に音ネタ💩ウンチクンです!
ゴスペルの話は後でするとして……

今作の音楽はテレンス・ブランチャードが担当しています。
テレンス・ブランチャードってジャズ・トランペッターなんですよね。ジャズを知っている人なら聞いたことあるかな?
ウィントン・マルサリスと幼なじみで、アート・ブレイキー率いるジャズメッセンジャーズにも参加していました。
その一方で、映画音楽も担当し、スパイク・リー監督作で度々その音を聴くことができますよ。


テレンス・ブランチャードは劇伴のみならず、今作のゴスペルも書いていて、ミンティが逃走する時、母や家族に別れを告げるシーンでは、会わずに歌を歌うんですが、それが「Goodbye Song」で、まるで昔から歌われた黒人霊歌のようでした。「約束の地」へと旅立つ気持ちが歌われていて、素晴らしかった。


グリーン神父が黒人たちを前にして説教する時に歌いますよね。
これがゴスペルです。
歌う神父と?言えば「ブルース・ブラザーズ」のジェームズ・ブラウンが有名ですね(ˆωˆ )フフフ…
以前、「グローリー」のレビューでも書いたんですが、ゴスペルって"Good Spell"から来ていて、良い知らせ(福音)を意味する言葉なんです。
黒人奴隷は、自分たちが、かつてエジプト人に支配されたイスラエルの民と自らを重ねていて、いつかモーセのようにエジプトから連れ出してくれる預言者が現れることを信じていたんですよね。
でも、直接的に言葉にすると、奴隷主らに虐げられるので、宗教的な言葉へと変換して歌っていました。
隠れキリシタンが聖母マリアを観音様に似せて祈ったのと似ています。

グリーン神父が最初に歌っていたのが「Hold On」、"天国に行きたければ、鋤から手を離すな"の歌詞は、一見して奴隷主への服従を示しているようですが、実は、神への信仰を失わないように説いているんです。

後半に歌われる「Sign of The Judgement」も同様です。





そして、最後に少しネタバレ。
ハリエットはあたかも「出エジプト記」のモーセのような存在となり、その名も「モーセ」として懸賞金がかけられますよね。
モーセって、イエス・キリストのような救世主ではなく預言者なんです。預言者というのは神の啓示を受ける者です。それは神の国へと導く者。そして、あの有名な「十戒」を賜るんです。

まんまなんですが、ハリエットも神の啓示を受けて黒人を導きます。家族を逃がすために故郷に戻り、追跡者たちに追い詰められた時、川を渡るんですが、あたかもモーセたちイスラエルの前で海が割れたように、ハリエットは川を渡るんです。
個人的には好きな演出。
おーっ、モーセだあ……って観てました(ˆωˆ )フフフ…

モーセは神を信じきれず、最後は"約束の地"へ入れなかったんですが、ハリエットは強い信念と信仰で家族を救い出しますよね。ずっと心配しながら見てたので、モーセと同じでなくて、良かった~って思いましたよ。
また、南北戦争のくだりは「グローリー」のデンゼル・ワシントンやモーガン・フリーマンを思い出しちゃった!

いや~、素晴らしい映画でした\(^o^)/
思った以上に爽快でもあったので、おすすめです!