ベビーパウダー山崎

メクトーブ,マイ・ラブのベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

メクトーブ,マイ・ラブ(2017年製作の映画)
3.0
冴えない内気な映画オタク(自称脚本家)が、ヤリまくってる従兄弟や女友達や知り合いを穏やかな顔して視姦している。豊満な肉体と整った顔立ちの女性がわんさか現れては画面越しに挑発してくる。誰もがバカンスを満喫しているなか「山羊の出産」の写真を一人撮っているその間抜けは、孤独にこんな映画を三時間じっとりと見ている俺たちの姿。映画や文化にのめりこみ、若さで無茶できる貴重な時間を無駄に過ごしてしまった。誰ともヤれず、拗らせ、また閉じ籠って他人の映画を再生している。図々しくてお気楽なクズが、女性をとっかえひっかえヤり捨てているのを横目で見ては愛想笑いするしかない日々。そもそも陰茎が付いてる「男」として見られていない。良い人としか思われず、遊ばれて傷ついた女性の悩み事を一生相談される人生。
ケシシュもその間抜けだった可能性はだいぶある。モテずに過ごした過去に復讐するべく、長時間だらだらと、女性たちが下着のような水着でだらしなく酒を飲み、過剰に触れあい、ケツを振りながら騒ぐだけの「ハーレム」映画を撮ったのかもしれない。
冒頭の「覗き見」される濡れ場は洋ピンなみに激しく、配信の視聴グラフはこのくだりだけ突き抜けるほど高い山になっていると思う。三時間たしかにバカ長いが、俺は飽きず付き合えた。ケシシュは、その土地で実際に生活している(根付いている)ような人々のリアルな会話を切り取り、生々しく見せるのが本当にうまい。
気持ち悪いほどの男性目線。批判されて当然の作品だが、多くを不快にさせる表現というのは、そこに何かしらの禍々しいエンジンがあるはずで、その作家の歪んだ魂を掴むためにもしっかりと自分で向き合う必要がある。
ちなみにこの若者たちのセックス&バカンスは三部作の予定だったらしいが、二作目は不当な撮影と最低な悪評のためカンヌ以降公開されず。役者に負担を強いる懲りないケシシュはもちろん地獄行きだが、その『Mektoub, My Love: Intermezzo』は、物語など無きに等しく、ほぼほぼクラブのシーンでエロス全振りとの噂、アホなフリしてフランスから遠く離れたJAIHOでこっそり流してほしい。