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ハスラーズのLCのレビュー・感想・評価

ハスラーズ(2019年製作の映画)
3.7
面白かった。

作中「いつ彼女は暴走したの?」と質問する場面があるけれど、「彼女は暴走しない」と返してて良かった。
当時の社会構造と、大きな変化(名言はしてなかったけれど、何とかショック的なものが頭に浮かぶ。日本でも派遣の雇い止めとか大きな影響があった、世界規模の大不況)の中で、その人が見てきたもの、体験してきたこと、考え方やスキル、そういったものの延長線上に生まれた出来事なのだよね。ある瞬間突然考えるのはやめだ!何もかもどうでもいいぜ⭐︎とラリッたから行った、ということではなく。

その世界に入るのって、入り口は色々あるかもしれない。お金が必要とか、煌びやかで憧れたとか。
でも、働いていくと嫌でも飲み込まれる。搾取や「性を物として扱う」という、そういうやつ。稼いでも稼いでも仕事で消えていく。何だかんだと理由をつけては稼ぎの中から巻き上げられるし、作中は流石に描かれなかったけれど、性病検査や治療だってお金がかかる。性病検査パスしたお客さんばかりが来るわけじゃないんだけど、お客さんはパスしたかどうか証明しない。それをわかってて、笑顔で楽しそうに仕事をするしかない。
豊胸もそうだけど、歯を白く保つ為に定期的にメンテナンスしたり、髪も仕事前には必ず美容院でお手入れしたり、そういうのは全部、お客さんに選んでもらう為。陳列棚に並びに行くのだ。
じゃあ転職しよう、となると、これは作中でも描かれていた。面接では性を売った経験が武器にならないし、バイトだと家族は養えない。

大不況でお店に来るお客さんは以前のようにお金を使ってくれなくなったが、要求は以前のようにするし、要求を通す為なら割と何でもする。リスクは減らないが稼ぎは減るので、様々な意味で自分を守れなくなる。
そこで、如何に稼ぐか、という思考を働かせることは、とても自然なことだったろうと思う。内容を検証して、より効果的に、確実に稼ぐには、と考えていく。
その先に、ドラッグを見出してしまった。しかしやはりこれも、驚きは少ない。仕事で断ることもできずに吸わされる場面があるが、ドラッグは身近な存在になってしまっていたんだろう。
ここでMDMAが使われたというのも、不況が関係しているように思える。従来のドラッグより安く手に入るので、お金のない若者の間で人気を勝ち取ったのがMDMAだった。通常エクスタシーと呼ばれるのだけど、共感作用がある為、愛の薬と呼ぶ人もいるとかいないとか。

最後、彼女たちはそれぞれに刑罰を与えられるけれど、同時に社会ではまだ性を仕入れて売り買いする仕組みが採用されている。今夜も誰かがお店を開けて、そこにお客さんが来る。
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