このレビューはネタバレを含みます
子供を育てている母親目線で書きます。
実の子でも、例え養子でも、段々子供が大人になっていくと、ナオミワッツのような心境に少なからずなるのではないでしょうか?
『子供が何を考えているのかわからない』
『子供が怖い』
‥等。子供がモンスターに見えるときも、正直あります。
ルースが弁論会のスピーチの練習を一人でやりながら、自分の本当の名前を母親がどうしても発音することができず、名前を『niceなアメリカ人らしい名前』(アイデンティティーの喪失)に変えられてしまい、涙するところが、彼の本当の今の心境を表していると思います。
彼が、『窒息しそうだ』というくだりも哀しいものがあります。この言葉はラストでルースがジョギングするシーンの閉塞感にも繋がると思います。
BGMも心臓が激しく鼓動しているような音で、とても暗い。
この先の彼の人生を示唆しているかのよう。
父親は母親の考えに従うと言うニュアンスの台詞を口にしたが、母親は孤独にルースを信じるしかない。
父親はルースは実の子ではない、普通の家庭が欲しかったと告白してしまう。
父親に元妻との間に実子がいるようなので、余計に血の繋がりを求めてしまう。
しかし、実の子でもあるいは養子でも、平凡で平和な家庭など、まぼろしなのではないか?
そして、最も悲劇的なのは、肌の色の前に、一人の人間として彼のことを誰も心から愛してはいないということなのではないでしょうか?