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天才たちの頭の中~世界を面白くする107のヒント~のmasososoのレビュー・感想・評価

3.6
107人の才人達への「なぜあなたは創造的なのか」というインタビュー。
抽象的な質問への答えは様々で方向性を作ることができない。
制作側の思惑に沿わせるような回答の捻じ曲げやトリミングがないことには好意的だけど、ドキュメンタリーとしては纏まりにかけたな。インタビュー集の域は出ていないかな。だから「世界を面白くする107の“ヒント”」っていう副題がついてるんだろうね。捉え方は自由ですよとある種の逃げにも感じちゃうな。

でもインタビューの対象とその回答自体は単純にとても興味深いもので楽しめた。
その意見の纏まらなさ、真逆のことを言う人たちが居るっていうのがおもしろい。
QTは生まれつきの資質、神からのギフトだと言うがザハハディドは荒天的に身につけた技術だと言う。
フランクゲーリーは“創造性依存症”「つくらずにはいられない」と創造性を喜びとして話したけど、デイビッドホックニーは「それしかなかった、やむを得なくて。そうじゃないと人生に耐えられなかった。追い込まれて創造的になった」と答える。
その後「想像と私は切り離せない、今後も描き続けるつもりだ。どんな形でもいい、倒れるまで。」と続ける。
去年彼の展示を見に行った。2001年のインタビューでこう答えていた彼けど、それから23年が経って86歳になったホックニーは言葉通り現役で描き続けているし、iPadをつかったりCG合成を活用したりと創造的な制作を続けてた。有言実行、かっこいい。

スラヴォイ・ジジェクっていう哲学者の回答。
「人は誰しも創造性を持ち突拍子もないアイディアを出せる。だがそのアイディアを形に整えられない。真の創造性は発想を秩序ある形で示すこと。」という意見はなんかストンと腹落ちしたな。しかもその意見に似たことを話したのがマリリンマンソンって言うのがまた面白かった。「僕が扱うのはコントロールされたカオスだ。竜巻を起こすが移動させない、一箇所にとどめておく。」

ネルソンマンデラから始まり、アラファト、シモンペレス、ゴルバチョフ、ジョージブッシュと名だたる政治家のインタビューの後にヴィヴィアン・ウエストウッドが「政治はなんの変化ももたらさない、政治家と呼ばれる人々には共通の特徴がある。自分は適任だとその地位にひたすらしがみつく。大衆に迎合し一般化した偏見を許し普通さを持ち上げる」「過去の変化は善意ある専制君主のおかげ」と身もふたもないほどに切り捨てるのが面白い。

「カフカの法文書集」おもしろそう。日本語版あったら読みたいな。
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