Fitzcarraldo

オフィサー・アンド・スパイのFitzcarraldoのレビュー・感想・評価

4.5
1894年。フランス陸軍参謀本部の大尉であったユダヤ人のアルフレド・ドレフュスをスパイ容疑で逮捕した冤罪事件(ドレフュス事件)を題材にしたRobert Harris著の"An Officer and a Spy"を原作に、驚異の米寿(88歳)を迎えたRoman Polanski監督作。

イーストウッドの92歳も衝撃だが、ポランスキーの88歳もかなりの衝撃である。フランスでは2019年の公開だから、撮影時はもう少し若いとはいえ、衝撃波は何ら変わらない。

撮影監督のPaweł Edelmanのセンスの高さも多分にあるにせよ、冒頭からグイグイと19世紀の世界に引き込まれた。

いや~オープニングから素晴らしい。
がっつりと引いたロングショット。
宮殿前の広場のような開けた場所。
兵隊がキッチリと並んでいるのが小さく見える。そこへ歩いてくる何人かの兵隊。
カメラが歩く人たちと一緒にゆっくりとパンしていく。

ここだけでもう好き。

後々にキーポイントになる将校たちを、ここでしれっと紹介しているのもスマートな語り口。


アンリ少佐を演じたGrégory Gadeboisの何ともいえぬ憎たらしい顔が素晴らしい。
イイ顔してる。日本の映像業界も、やはりキャスティングは事務所の力や、バーターで決めるのではなく、顔で決めてほしい。

この顔がスクリーンに映るだけで、なんか嫌な感じを自然と受ける。これが役に合った正当なキャスティングだろう。


そして、美術にもかなりこだわりを感じる。かなりお金をかけて19世紀の雰囲気を醸している。とてもいい映画を見てるなぁという嬉しさが鑑賞中から込み上がる。

特になにげない飲み屋でのシーン。
この飲み屋の雰囲気から、奥の舞台で踊ってる踊り子さんの衣装まで素晴らしい雰囲気。


劇場で見てから二週間後のレビューなので、もはやかなり忘れてしまっているので、メモしていたのをそのまま記す…。


このクソみたいな体質はもう何百年も変わらないのか…全く人間は愚かというのか欲深くて、狂気を孕んでいる。

それはキリストと何の関係があるのか?

議論のための議論
全くの無意味。

真実と愛のために誠実に生きることで、邪魔者、異端者とされてしまうのは、今も変わらないのかも。

そんな奴がいないからこそ、周りから浮いて見えてしまう。

いや〜もうピカールに感情移入して見れたと同時に、何とも人間は変わらないものかと呆れ果ててしまう。


ブルータスお前もか⁈

紆余曲折あり、将軍?大臣?となったピカールだが、ドレフュスの正当な意見に耳を貸さない。

アンタは軍属から離れていたのに、キチンと出世したと…自分は、それが考慮されていないと。正式な位を要求する。
中佐が妥当だと…

しかし、旧敵とも仲良くやらねばならないと、なにやら前の大臣や将軍と同じじゃねぇか?!
結局、誰もが権力や高い位を得ると、そこに安住したいという気持ちが膨れるのか…

そこの人間の欲深さがよく表れている。
よきエンディング。

ここで、素直にドレフュスの言い分を聞くのだとつまらない。敢えて聞かない、そして二度と会わなかったという字幕が、余韻を残す。


世界中にMe Too運動を引き起こすキッカケとなった男Harvey Weinsteinは、2020年2月24日に強姦罪などで有罪の判決が下り、3月11日に禁固23年の刑が言い渡され収監された。

一方で…ロマン・ポランスキーは1977年に当時13歳だった子どもに性的暴行し、禁錮刑に42日間服したものの、仮釈放中にアメリカから逃亡。フランスとポーランドの市民権を獲得し、アメリカ当局の身柄引き渡しを何度も回避しているという往生際の悪さ。

作品に罪はないと、よくいわれたりもするが…オツトメもせずに罪を償わないで逃げ回ってる人間が作ったものは…さすがに罪があるようにも思うが…


そんな作品に金を払って見て、いい映画を見てるなぁといい気分になってしまった自分も複雑な気持ちである。
Fitzcarraldo

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