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異端の鳥のryodanのレビュー・感想・評価

異端の鳥(2019年製作の映画)
3.9
前評判や売り文句があざとく感じて、ずっと見ないでいた作品。見てみたら全然見やすい(変かな??)。ハッキリ言って塚本監督の「野火」の方がはるかにエグイ。どちらかと言うと、今作は寓話的な作りになっていて、ウソ感があるね。主人公の経験するエピソードの数々は、あの当時の戦争による産物とは言い難く、今ここにある現実と言っていいのかも。まぁ、見ていていろいろ考えたね。人間が残酷に見える時って、動物に近い本能的な欲求が見え隠れする時なんだよね。寛容な時って、人間の思考が知性的な時だったりする。ある意味思考停止な時って、人間、どんな時でも残酷になる。時代が戦争とか関係ない。学校のイジメ、職場のハラスメント、異端だから排除とか関係ない。そんな理由は後付けでしょ。自分が助かるために他者をおとしめる。構図は簡単。後は人数の問題。思考が停止しているから、情報を鵜呑みにして洗脳される。結局、いかなる時も知性的であれ、と言う訳だ。「野火」もそうだった。「火垂るの墓」のあの少年と、今作の少年は同じ境遇だと思う。なのに「火垂るの墓」の彼は、何故か自己責任論で片付けられて、本来の戦争よる罪を考える風潮がなくなってきている。「生きたい!」と、こちらの主人公もあちらの主人公も願ったはずだ。自己責任論を問うなら、「死ぬ」という選択肢だってあったはず。今作ではそれは強く感じた。なまじ生かされているから辛い現実が待ち受けるのでは?死ぬことに恐怖を感じるのは、人間が知性的だからだと思うんだよね。一寸先は闇なのに闇の想像が出来るんだから。戦争が人間を狂わすって、よく聞くけど、それこそ思考停止であって、じゃ、狂わされる前に何とかしましょうよって話。有史以来、繰り返される戦争。もう、ここらへんでイイんじゃない?
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