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風にそよぐ草のericoのレビュー・感想・評価

風にそよぐ草(2009年製作の映画)
3.0
ひったくりに遭った女の財布を男が拾うところから始まる奇妙な交流。何かを期待しながら電話をかけ、手紙を送り、家を訪ねる。女のつれない態度(財布を届けられた人としてはごく真っ当な態度だけれど)に男が激昂し女と距離を取るようになると、今度は女がそれにやきもきする。

男女間の機微を極度にデフォルメしたシュールな味わいに翻弄されるのもまた楽し。はじめのうちは頭には疑問符だらけだけど、慣れればこの映画は「恋愛あるある」なのかも。独り善がりな期待が裏切られたと相手を攻撃してみたり、自分の存在に気付いてほしくてちょっかいを出したり、自分のコンプレックスが気になって話どころじゃなかったり。そんな初恋のようなくすぐったさを、50を過ぎた男女が持て余す可笑しさ。

いくつになっても、恋を「上手に」出来るようになんてなれないのは、やっぱり他者というのは人間にとって永遠のミステリーだから。少女の謎めいた言葉、「猫になったら猫の餌を食べられるの?」は、逆を言えば人間であるわたしたちは決して猫の餌を味わうことは出来ず(頑張れば出来るんだけど、まあ…)同じように他者ではないわたしたちは、他者の人生を味わうことは出来ない、という隔たりを指している…のかなぁ。「愛して、飲んで、歌って」に続いて、またもや狐につままれたような気持ち。
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