小松屋たから

ラスト・クリスマスの小松屋たからのレビュー・感想・評価

ラスト・クリスマス(2019年製作の映画)
3.7
クリスマスの恋人向け映画で、自分が観る作品ではないだろうな、と思いつつも、劇場へ行ったのは、TOHOシネマズの「年末調整」(?)のため。

ここしばらく、シネマイレージの累積ポイントがもう少しで最後の「一ヶ月フリーパスポート」GETに届くと気付いてから、TOHOシネマズシフトになり、大作や予定に無かった作品ばかり観ている。これは、下手をすれば、自分には合わない作品を有料で多く観ることになるだけで、実は総合的には「得」をしないことになりかねないという大いなる矛盾を孕んだ行動で、見極めが難しいのだけれど、本作は予想外に観て良かったと思う作品だった。

本作は最後まで観終わると、このキャスティングの意味、なぜ、ワム!の「ラスト・クリスマス」でなければいけなかったのかがわかる仕掛けになっている。

「ラスト・クリスマス」の歌詞をまさしく「文字通」り再現するアイディアも面白く、人種は異なれど命は等価値であることを正面から訴えてくる。そして、今、イギリスを騒がせているブリグジット(EU離脱)、移民排斥問題、そして、格差の拡大、LGBT問題を背景に、多様性の大切さを説く。

それぞれの掘り下げ方は決して深くないから、盛り込みすぎのような感じもなくはないが、「過去の名曲にインスパイアされたクリスマスのラブストーリー」という柔らかい衣の下に鎧を隠す手法は中々巧みだった。

クリスマスなんだから、せめてこの時期だけでも不寛容を止めようよ、奇跡を信じようよ、というメッセージは「クリスマス・キャロル」「グリーンブック」などにも通じるものがあり、欧米の良心的な人々が「クリスマス」に託す思いを感じられる作品だった。

(でも、エンドクレジットに電通らしき名前が見えたので、ある程度、日本マーケット向けにもカスタマイズされた作品なのだろうか)