笹春

地獄の黙示録 ファイナル・カットの笹春のネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

リバイバル上映にて三度目の鑑賞。とにかく自宅で見るのとは迫力が違った。特にワルキューレのシーンは自宅でも鳥肌ものだったが、劇場での鑑賞はレベルが違うほど圧巻だった。
映画は総合芸術。演出、脚本、演技、照明、音響、編集、撮影すべてが一つになる瞬間に生まれる奇跡的な産物。この作品はまさに総合芸術と呼ぶにふさわしい。ストーリーは複数のエピソードから成り、話の大筋をなすカーツ大佐のエピソードは最後の1/3ほどしかない。この作品を好きになれない人の気持ちはよく分かる。カーツ大佐の元までたどり着くまでとにかく長く飽きてしまう、その上ラスト一時間はそれまでとは異なり、宗教的、精神的な世界観へと一気に変化する。まさにカオスだ。
それでもそのような複数の要素が決してバラバラに散らばることはない。演出が複数のエピソード、さらには音響や演技すべてを含みこんで、「混沌」という一つの調和を生み出している。特にラストシーンは神がかっているという言葉以外で形容することは不可能だ。すべてのシーンがこのラストシーンのためにあったようにも思えるし、むしろこの伝説的ラストシーンがすべてのシーンのためにあるのだとも思える。映像芸術がたどり着いた一つの極地ともいえる。
この映画を嫌う人がいようとも、ベトナム戦争の記憶が薄れようとも、これから先どんなに素晴らしい映画が生まれようとも、この作品は決して色あせることなく、伝説的な作品であり続ける。
笹春

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