高矢

地獄の黙示録 ファイナル・カットの高矢のネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

とてもとても面白かった。IMAXで観られてよかった。
まず導入がいい。世界観を教えるオープニング、主人公のパッとしない現状、指令を説明する偉い人との会議。主人公に目的ができ、ストーリーが始まる。

音楽と笑いに溢れた前半。キルゴアの存在感。ワーグナーとサーフィンのための爆破と、ナパームを「タバコ一服幸せだわ〜」みたいに語るセリフも狂気的だけど、「この戦争もいつか終わる」って一言でわかる。ただ好戦的な人じゃないんだ。歪んでしまったんだ、この人も。

ディズニーランドの話題を出してくるのが秀逸。まさにこの映画の前半はアトラクション感覚で楽しむことができる。船で運河をわたって濃いキャラクターと出会いながら、ジャングルやイカれた基地や、爆炎あがるドンパチを見る主人公。さらに僕たちはそれを安全な観客席から観てる。

橋を越えカンボジアに入ると後半。打って変わって静かになる。
温厚な仲間たちは死んでいき、犬も消える。いつしか僕たちは、この嘆かわしい社会構造に反発するカーツとの出会いが楽しみになっているし、一種の救いすら求めている気もする。
でもカーツもやはり狂気だった。陰影の使い方がうまい。神仏像を意識してるんだろう。詩と科学を謳いながら人命を意のままにしてる。そして感情のない兵隊で軍を作ろうとしてる。でも言ってることは理にかなってる。地獄に光をもたらそうとする唯一の神。現状を疑問視していた主人公とカーツは鏡合わせになる。そして主人公は神を殺す。これでこそ地獄だ。

ひとつだけ、
屠殺のシーン。
いろんな意見があるんだろうけど、越えちゃいけない一線だろ。
感情面でも納得できないし、映画のために動物を殺すのはパフォーマンスのために戦争を起こす連中と同じだろ。共犯になってどうすんだ。
「命が人の手でやりとりされる理不尽」を演出したかったなら他に方法あるだろ、これだけいろいろできるんだから、あなたはすごいんだから。

おやすみなさい
高矢

高矢