ねぎおSTOPWAR

エウォル~風にのせてのねぎおSTOPWARのレビュー・感想・評価

エウォル~風にのせて(2019年製作の映画)
3.6
東京国際映画祭2019 3本目/9本は「エウォル~風にのせて」

「韓国映画」
・・って言うと皆さん思い浮かべるのって血が出る!グロ!死ぬ死ぬ死ぬ!!すみません!笑
まあ遠からずダークなイメージあると思いますが、この作品は違います。派手さは皆無!

売れないバンドマンのチョルが一人済州島を訪れます。そこには大学の同級生のソウォルがいて、周囲には本土を面白く思っていない島の人々。どうやらチョルとソウォルにはあまり積極的には触れたくない何かがある様子。それは・・。



見始めて少しして思ったのは「これ松竹映画じゃん!」でした。
松竹って小津安二郎監督が主に映画を撮ったスタジオです。当時のスタジオシステムはもうないですが、小津さんの流れは受け継がれ、松竹は何気ない家族を描き、嵐のような雨は降らず、ストーリー展開も穏やかな傾向が残るわけですよ。
もちろん全部が全部じゃないですけどね。
この現在の松竹映画を実は苦手にしているわたしですが、「まあね、この監督の長編デビューだしねっ!」
ゲストトークで監督が言っていましたが、俳優には、悲しい気持ちを極力出さないでくれと言っていたそうです。でも映画って面白いですよね、気持ちを堪えてる、あるいは言いたいことが言えないでいると「勝手に」思って観るんですよね!
もちろんそれが演出だしそれを狙った編集ですけど。
ソウォル役、チョル役の俳優さんのそんな演技もどこか初々しく感じます。デビュー作のたどたどしさもストーリーや雰囲気にマッチして、とても優しいデリケートな味わいの映画でした。


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ラストの良かったところ書いちゃいます
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「青い灯台」がキーなんですが、この使い方良かったです。
まず通販で。
ソウォルはまだ微妙な反応。嬉しくもあり余計なことしてとも。
そしていよいよの前の爪の青いのを洗うシーンはいいフリ!あれだけじゃまさか塗ったとはね!何かしたなという示唆。
そして青い灯台を見せた、つまり彼女の心に一つの区切りを与え、止まっていた時間が動き出すシーンはこの映画のベストショットかな?優しい風が吹くんです。
んで、マグロ!はともかく、「あっ!みんなで塗ったのか!」の伏線回収は良かったなー。これぞ松竹!寅さんか釣りバカっぽいオチ!!

決して派手な作品じゃないし、長編デビューらしく〈周到さ〉は感じませんが、静かな感動が味わえると思います。
済州島の自然も綺麗です。