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街の上でのEDDIEのレビュー・感想・評価

街の上で(2019年製作の映画)
4.9
“難しい”“面倒臭い”“愛しい”“楽しい”など恋愛の全てが詰まった群像劇。主演から脇役まで全員が愛おしい脚本と演出の妙。警察官最高すぎ。
他人に話したくない元カレ・元カノってツラい。誰かにとって遠慮なく楽しめる大切な存在になれたらいいよね。

もともと昨年2020年5月の公開予定とかでしたかね?すでに試写会で鑑賞されている方もいるなかで、約1年の公開延期という拷問期間を経てついにベールを脱ぎました。
あまり今泉力哉監督作品だから観る!みたいな思い入れはないのですが、本作は特に観たいという思い入れがあった作品です。

まず主演の若葉竜也。もともと今泉作品常連という彼ですが、ここ最近はたくさんの映画を中心に脇役などで大活躍。そんな彼が単独初主演という大抜擢なわけです。
もともと子役でデビューしたというかなり長いキャリアを誇る俳優のようですが、彼の名前と顔を認識したのはごく最近のことです。
そして、今をときめく平成生まれの実力派若手女優たちの共演。
ただここは延期したことが功を奏して、この1年ぐらいで一気に萩原みのりが好きになったので楽しみは倍増していました。
古川琴音の出演も注目していた理由の一つ。昨年放送された朝ドラ『エール』で主人公夫婦の子供役として活躍し、話題作『花束みたいな恋をした』のほか、『泣く子はいねぇが』などにも出演して活躍の幅を広げています。

『街の上で』はとにかく日常の当たり前と変わり映えのない毎日を映し出し、ドラマ性など微塵も見せない前半は淡々としています。
若葉竜也演じる主人公の荒川青は下北沢の古着屋で働いており、言うなれば大した特徴もない普通の人。いや、仕事中に暇だからずっと本読んでるところとか含めると普通の人ではないのかもしれないけど。
まぁそんなこと言い出したら「普通って何?」論争に入りそうなのでここいらで。

そんな淡々とした日常を過ごす彼に突然大学生の自主製作映画に出演してほしいとのオファーが。「どうする?青?」状態から一生懸命意識して練習し始める青が可愛らしいです。

ある意味、女性像としては今泉監督作品にありがちな「そんな子ホントにおる?」と思わせる男の理想像みたいな子がいたり、だけど萩原みのり演じる高橋町子のような自分の突き進む道に一生懸命な女の子がいたりと、なんだかありそうでなさそうなギリギリの絶妙なラインが心地良いんですよね(萩原みのりの超ショートカット可愛すぎました)。

今回目に留まったのが町子の学友にして可愛らしい関西弁を操る城定イハ。中田青渚という子が演じていましたが、青とどんどん自然に打ち解けていく会話劇があまりにも良すぎて、あの2人の会話だけでもう一回見たいぐらい。というかこれは若葉竜也も上手い。本当に2人とも凄い。

あとは抜群の演出と小粋に伏線を回収する脚本。そこでそのアイテム使うかーとか、そこでそのキャラ再登場させる!?とか、もう監督ら製作陣の狙いが観客の心を鷲掴みにしているような、そんな感覚でした。

ここまで色々と各俳優について誉めてきましたが、個人的に一番好きだったのは穂志もえかです。ラストのあの片方の肩だけ覗かせるパーカーの着こなしはたまらんでした。例の通りでの口論のシーンはたまりませんでした(マジで笑った)。

渋谷のヒューマントラストシネマが満席になっており、ミニシアター系ながらヒットの予感満載の本作。口コミなどでもっともっと広がっていくんではないでしょうか。
基本的に映画は1人で観に行きたい派なんですが、この作品は誰かともう一度観に行って語り合ったりもしたいなぁと思わせられたほどです。
帰り際にカップルが『街の上で』の横長のポスターを見ながら、女の子のほうが「ふーん、一番右の子がタイプやったんやぁ」みたいな会話が耳に入り、その後の喧嘩に発展しないか勝手ながら心配しておりました。笑

※2021年劇場鑑賞46本目
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