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世界一不幸せなボクの初恋のLCのレビュー・感想・評価

世界一不幸せなボクの初恋(2019年製作の映画)
4.2
興味深かった。

幸せを感じると、ナルコレプシー症状が出る。日常生活を送る上での恐怖は想像を絶する。
特に本作の主人公は、見知らぬ誰かが犬と共にそこに在るだけで緊張している。可愛い、幸せそう、癒される、ポジティブな感情を抱いたその先に、倒れる自分を描いているのかもしれない。どの程度で倒れると把握していたというより、倒れたらダメ、という意識の強さ故かなと感じる。

この想像を絶する恐怖に、倒れたらダメ、という強く持つ意識に、それでも負けるなと背中を押す弟自身の意識の変化も見受けられる。そこがとても好き。守って庇ってばかりじゃなくて、信じて手放してみる。お前も幸せになれ。よろしく頼む。

兄弟と交流する女性陣も魅力的だった。
一緒にいて楽しいばかりじゃなく、痛みに寄り添ってくれる相手って、かっこいい。わかる。
勿論、痛みを忘れてもらおうと全力で笑わせてくれる相手だって、魅力的だ。それはそう。わかる。
ただ、ネガティブな側面も含めて、受け止め合って、支え合えるって、本当に貴重な関係なんだよな。
もう1人は、一緒にいて楽しくない相手として描かれたんだろうか、と思うけれど、十分に魅力的だった。つまらない人として描くのは難しいキャラクターだった印象。
思いやりはきちんとあるし、目の前のことを楽しむ姿勢だってあるし、演奏も全力。感性も光ってた。アステカの話とか興味持ってる人たくさんおるよ、ただ、今回交流した相手はそうじゃなかっただけだから。お前も幸せになれ。よろしく頼む。

弟も大変だったけど、彼以外の周囲の人もきちんと理解を持って主人公に声をかけたり、見守ったりしていた。このことが何より嬉しい。メリーゴーランドなら安心して意識をなくせる、そうだな、この安心感を持って一緒にいられる相手に出会えて、見てるこっちも笑顔になっちゃうよな。
一生懸命に引っ張る犬さん見ても笑顔になっちゃうよな。
さっさとせい、と最後の一押しをする彼女にはガッツポーズまでしちゃうよな。

幸せに生きることを選択した姿を見て、心底嬉しい気持ちになる作品。
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