落伍者

彼女と彼の落伍者のレビュー・感想・評価

彼女と彼(1963年製作の映画)
3.5
大きな黒い犬を連れていたり、握り飯を食べ、肩にかけた手拭いで汗を拭う仕草が一々汚らしく、どうしても受け入れられそうにない描写を盛り込むのが上手い。ラストカットまで見て漸く「団地妻 昼下がりの情事」的な話ではなく、秩序立って発展していく戦後日本と、そこから零れ落ち、初めからいなかったことにされる存在とを比べ、心に疑念が生じ、自分は本当にこのままでいいのかと不安になる話だと理解した。彼は夫の岡田英次と同窓であり、左幸子もそれまで決して裕福ではなかったはずなのに、冒頭の「対岸の火事」から徹底して断絶している状況設定が面白い。交流しない方が良いのではと少し思ってしまうが、完全に分断されるとカップ麺の値段知らなかったり、公共交通機関利用したことないジジイたちが思い付きと利権だけで国を動かすようになるからね。仕様が無いね。
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