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WAVES/ウェイブスのkuuのレビュー・感想・評価

WAVES/ウェイブス(2019年製作の映画)
4.0
『WAVES/ウェイブス』
原題 Waves.
映倫区分 PG12
製作年 2019年。上映時間 135分。
トレイ・エドワード・シュルツが監督・脚本を手がけた青春ドラマ。ある夜を境に幸せな日常を失った兄妹の姿を通し、青春の挫折、恋愛、親子問題、家族の絆といった普遍的なテーマを描く。
主人公タイラーをケルビン・ハリソン・Jr.、ルークをルーカス・ヘッジズがそれぞれ演じる。

フロリダで暮らす高校生タイラーは、成績優秀でレスリング部のスター選手、さらに美しい恋人もいる。
厳格な父との間に距離を感じながらも、何不自由のない毎日を送っていた。
しかし肩の負傷により大切な試合への出場を禁じられ、そこへ追い打ちをかけるように恋人の妊娠が判明。
人生の歯車が狂い始めた彼は自分を見失い、やがて決定的な悲劇が起こる。
1年後、心を閉ざした妹エミリーの前に、すべての事情を知りながらも彼女に好意を寄せるルークが現れる。

映画だけではなく、スポーツや音楽でも才能が開花して人が成長するのを見るのは不思議なものです。
烏滸がましいですが、これは若き映画監督トレイ・エドワード・シュルツ監督も然り。
彼の初長編映画『クリシャ』(2015年)、その後、『イット・カムズ・アット・ナイト』(2017年)で、わずか3作目にして、広範囲に影響を及ぼすさらに野心的なストーリーを実現して、しかも親密で個人的なアプローチに忠実であり続けてる。
実際、『WAVES』やと、彼は基本的に1本で2本の巧みな映画を提供していました。
善きオープニング・クレジット・シークエンスは、ティーンエイジャーの生活の内側へと誘う。
絶え間ない動き、笑い、自立への憧れ、そして責任と構造への兆し。
シュルツ監督の作品は、悲劇的な一線を隔てた2つのラブストーリーと云える。 
前半がタイラーのものであるのに対し、後半は彼の妹エミリーが所有してる。
成熟度を超えているはずの状況や感情に対処しながら、エミリーは自分がいかに強いか、そして、心は常に思いやりと気遣いに応えることができるかを証明する。
映画の焦点とトーンが変わるにつれ、登場人物は感情の限界に追い込まれる。
今作品は、流れや豊かな質感に対するシュルトのこだわりを邪魔することなく、瞬間のスナップショットを提供していました。
撮影監督ドリュー・ダニエルズによる写真は、創造的で変化に富み、作品に大きなアクセントを与えてたし、音楽もまた、今作品には欠かせないかな。
トレント・レズナーとアティカス・ロスの音楽は完璧なタッチを与え、サウンドトラックは今の世代の好みと両親世代が共感するモンを対比させてるとこなど驚くべき繋がりさえ形成していた。
妊娠、パーティー、親とか、ティーンを扱った映画ではよくあるテーマやけど、今作品は他の作品よりも深く掘り下げてたのは巧みでした。
何よりもテンポが巧みでした。
色の使い方も同様。
南フロリダを舞台に、人間らしさを切り取った、スタイリッシュでハートフルなドラマです。
良い決断の積み重ねが土台となり、一つや二つの悪い決断が全ての良い決断を覆してしまう。
タイラーとチームメイトが試合前に
"I cannot be taken down!"
って、掛け声で士気を上げるとき、人生には絶対に倒れる可能性があることを観てる側の多くが知っている。
タイラーはこの教訓を最も過酷な方法で学び、妹のエミリーはその余波に対処する。
受け入れと許しをテーマにした今作品は、沢山の経験のある映画監督の作品のように感じられるが、明らかに若きトレイ・エドワード・シュルツ監督は、こないな才能の持ち主であると個人的には思いました。
巧みな作品で楽しめましたよ。
余談ながら、
シュルツ監督が事前に本編に使用する楽曲のプレイリストを作成し、そこから脚本を着想し製作したそうです。
監督自身が『ある意味でミュージカルのような作品』と語るように、新作をリリースするごとに音楽シーンを刷新してきたアーティスト達の、今の時代を映す31曲が、今作品の物語を鮮やかに彩られてます。
全ての曲が登場人物の個性や感情に寄り添うように使用され、時には音楽がセリフの代わりに登場人物の心の声を伝える、〈プレイリスト・ムービー〉やと云えると思います。
お節介ながら、参考がてら、曲名とアーティストを羅列ながら記載しときます。
使用楽曲一覧
「FLORIDADA」「LOCH RAVEN (LIVE)」「BLUISH」 Animal Collective

「BE ABOVE IT」 「BE ABOVE IT -EROL ALKAN REWORK」「BE ABOVE IT – LIVE」 Tame Impala

「MITSUBISHI SONY」「SIDEWAYS」 「FLORIDA」「RUSHES」
「RUSHES (BASS GUITAR LAYER)」「SEIGFRIED」 Frank Ocean

「WHAT A DIFFERENCE A DAY MAKES」Dinah Washington

「La Linda Luna」 Kelvin Harrison Jr.

「LVL」 A$AP Rocky

「AMERICA」 The Shoes

「BACKSEAT FREESTYLE」 Kendrick Lamar

「IFHY」 Tyler, The Creator feat. Pharrell Williams

「FOCUS」 H.E.R.

「LOVE IS A LOSING GAME」 Amy Winehouse

「SURF SOLAR」 Fuck Buttons

「U RITE」「U-RITE (LOUIS FUTON REMIX)」 THEY.

「I AM A GOD」 Kanye West

「GHOST!」 Kid CudiSERENADE」 Glenn Miller Orchestra

「THE STARS IN HIS HEAD (DARK LIGHTS REMIX)」 Colin Stetson

「HOW GREAT」 Chance The Rapper

「PRETTY LITTLE BIRDS」 SZA feat. Isaiah Rashad

「TRUE LOVE WAITS」 Radiohead

「SOUND & COLOR」 Alabama Shakes
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