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WAVES/ウェイブスのEDENのネタバレレビュー・内容・結末

WAVES/ウェイブス(2019年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

12/8/2019

どんなに簡単に人生が変わってしまうことか。

「ケガをして、部活のシーズンで活躍できないフラストレーション→それによって大学や将来への不安も増す」「家族、特に父親は自分をpush hardする。その期待の重圧に押しつぶされそうになれながらも追い込む」「付き合っていた彼女は、生理がこないという。」と、ティーンのときに経験した人は少なからず経験した人はいると思う。悪いことに悪いことが重なり、どうすればいいかはもうわからない。鏡を何度もみて冷静になろうとしても、体内でのたれ回る怒りと憤りは止まらない。

そして、ガレージでのケンカ。お互いイライラしている。2分もたたずにヒートアップしていくケンカ。口を開けば、ファックユーしかもういうことはできない。彼女は頰をたたいてくる。だから、彼女のことを、そのまま押した。




グシャん、とした音。ガラスより分厚くて脆いものが壊れた音。

「ケンカがヒートアップして彼女を押した」。だなんて、残酷なことになにも珍しくもなく感じる。でも、そして、彼女は死んだ。頭から流れる血が水たまりみたいに広がっていく。もう動かない。戻れない。自分はいったい何をしたんだ。取り返しがつかないのに脳がショートを起こしている。なにが起こっているんだ?なにが起こっているかなんて、目の前で皮肉的なくらい明らかなのに。

「ケガしたことで部活にでれなくなり、大学に行けなくなったらどうしよう」と少し前まで考えていた主人公は、大学どころか人生のうち30年間を、刑務所で過ごすことになった。

全てが一転するのは、なんて一瞬。

日常のつながりも、自分というつながりも、一瞬にして打ち切られる。それは、タイラーはもちろん、その周りの家族もそう。「自分というつながりや日常といったつながりが打ち切られる」だけではない、そこにあるのは「犯罪者」である自分と、「犯罪者の家族」である3人。

しかもその犯罪は、殺人。


ここまで何度も書いてきたけど、こうしたことがどれだけ自分とすれすれの部分にあることか。絶対に起こらないようにしなくてはいけないというのと、起こったときにどう毎日を過ごしていくのか。正直、わからない。でも、このように日常が一瞬にして崩壊する映画をみるたびに、その恐ろしさを実感するとともに、「このようなことが起こらなくてよかった」とも思うし、「彼らに対して、(アレクサの家族と、タイラーの家族)なにができるか?」と思う。「犯罪者の家族」って、映画ではあってもドキュメンタリーとかではあまりみたことないな。「被害者の家族」ならあるけれど。

わたしはやっぱり、ここで「タイラーを許せ」という立場はとらない。タイラーが押して、アレクサが倒れて死んだ。それは、司法が、裁くべき。そうでないと、アレクサの家族や友人、そしてアレクサ自体の命を軽んじたことになる。

途中から、タイラーが出てこなくなりエミリーにフォーカスがシフトしたけれど、その前のエミリーの出てこなさようと、そのあとのタイラーの出てこようがあまりにも顕著すぎた。タイラーどうなった?と思ったもの。最後の祈りの部分が映ったのはまだよかったけれど。
あと、アレクサの家族側がほとんど映らなかったり、ルーカスくんの家族のことだったり、ところどころ描写が足りなかったりしたところはあった。

海のシーンは、とても美しかった。アレクサのオレンジのネオン色のネイルが、青に包まれた彼らの中で燈台のひかりみたいにみえる。

だからこそ、そのあとの残酷性が悲しくて恐ろしい。

「犯罪者の家族」というテーマを本や実際の事件を通してもっと考えたいと思った。

あと、アレクサってmid90sに出てた子かな?とてもかわいい。
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