カリカリ亭ガリガリ

ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONEのカリカリ亭ガリガリのレビュー・感想・評価

4.1
やっと観た。流石に破茶滅茶面白かった、けど、もうほんとに破茶滅茶ですね、映画自体も(笑)
前作『フォールアウト』以上に、もはや作劇とかウェルメイドな脚本とかを切り捨てて、ひたすらに面白い、前人未踏のアクションシーンごとにシークエンスを連結していく。まだ前作の方がショットについても気遣っていたと思えるほどに、ショットの力よりも連続性、コンティニュイティーを信じた映画。だから駄目と批判するまでもなく、だからいいんでしょこのシリーズは、とは思う。でも、コレはダメじゃんよ!と怒る人の気持ちも分かる(笑)
こんな空虚で無意味でホンモノな映画、もう作られないんじゃないか……?

それでも、クリストファー・マッカリーとトム・クルーズという二人のシネフィル(こども)おじさんたちの健全な戯れに、不安も疑問も感じる隙はなく、安心して過ごす163分間。馬が走る、トムが走る、もはやこのシリーズ、その辺は前半でサラッと済ませる。

オモチロイナーとニコニコ観ていると、クライマックスの暴走列車アクションの本気度で感動し、終いには突然スピルバーグの『ロストワールド』的落下サスペンスの文字通り数珠繋ぎ展開になり、笑った。アクションの連結を描いた映画が、連結された列車アクションで終わる。人は面白すぎると、笑ってしまうのだ。

マクガフィンとなる2つの鍵が、前後編に分かれている本作それ自体を表しているのかな、なんて。まあ、皮肉にもこの映画自体がマクガフィンみたいに"意味"がないからね……

余韻としては、ロジャー・ムーア版007を観た後のような、ポップでスクリューボールコメディ的な荒唐無稽さがある。でもアクションだけはホンモノ。その歪な感じ。

個人的には1ぶりのキトリッジ復活はアツい。27年ぶりのキトリッジ。全然変わってない。むしろもっと可愛いオッサンキャラになってる。タイトル出る前の「だよな」な顔も最高。キトリッジ出るだけでちょっとデ・パルマ思い出す(笑)し、そういえばクライマックスの列車(外・内)アクションは、デ・パルマ版をアクションで超えるぞ!という意気込みすら感じた。

あとは『ソウ』のゴードン先生を久々に観たな。『ジョーカー』でも刑事を演じてたシェー・ウィガムが銭形的ポジションのCIAのオッサンを演じていて、彼とイーサンが交わす視線もいちいち良い。

シリーズで最も女優陣が全員漏れなく魅力的だったと感じた。
レベッカ・ファーガソンは『ローグ・ネイション』の頃から素晴らしい。『キャプテンアメリカ』のペギー・カーターことヘイリー・アトウェル、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のマンティスことポム・クレメンティエフ。まるで「マーベルも現代のアクション映画のひとつだ、共にアクション映画を更新しよう!」とトムと手を取り合っている。特にポム、クレメンティエフ、あんな狂犬な役が似合うとはね!
そしてヴァネッサ・カービー演じるホワイト・ウィドウも前作よりチャーミング。ふへえ〜って寝ぼけるホワイトウィドウ。パーティーでのドヤ顔連発、ドヤ顔が似合う役だ……(ホワイトウィドウって1のマックスさんの娘という接点なので、キトリッジとの邂逅はアツい)

あと冒頭のロシアの潜水艦の人々も良かった。というか、潜水艦モノ、やりたかったんだね、マッカリー、トム……分かるぜ……(あれが『私を愛したスパイ』オマージュなのは分かるけれど、『パトレイバー』っぽかったというか、押井守っぽさがあったのも好き……)

『ローグ・ネイション』よりは完成度が、『フォールアウト』よりは乱暴度が落ちてはいるので、満点!なテンションではないけれど、そりゃあこんなのスクリーンで観て良かったです。来年の完結が楽しみだ!!(と思ったらストですよ。早く見せてくれ!)

脚本執筆とか編集とか、もう映画なんて嫌だ……とアンビバレントに疲弊した時に救ってくれるのは、やはり娯楽映画……疲れた時にこそ、映画館へ向かわなくてはならない。