nana

ダンサー そして私たちは踊ったのnanaのレビュー・感想・評価

3.8

「打」
強い踊り。

50年前からジョージアの舞踊は男らしさ。

ジョージアの国立舞踊団のダンサー·メラブの物語。

ヨーロッパの小さな国・ジョージア。
旧ソビエト連邦の構成国で以前はグルジア。
ヨーロッパとアジアの境にあり、首都トビリシは美しい石畳が並ぶ街。
日本人の99·9%が訪れる事が無い国。

スクリーンに写るやわらかな異国。
町並みは明るい。
蔦が絡まるアパートメント、橋。
人々の服装、車、建造物。
パオみたいな形のパン。
質素だが多幸感に溢れている。
物を大切にしてきた人々。
そんな印象を受ける。

この作品は主人公の心情の変化により、観る側の感覚的色彩が変化する。


国立舞踊団の若きダンサー達。
ひたむきに代表を目指す主人公のメラブ。
華奢で繊細な瞳に強い情熱。
昼はダンスレッスン、夜は飲食店で働き家族を大切にする彼。
パートナーでガールフレンドのマリ。

彼の穏やかでストイックな日常はカリスマ的な新星·イラクリが現れた事により崩れ始める。

嫉妬と憧憬
引き寄せられ、かわす。
抗えない彼の引力に揺れ動くメラブの純粋な心。

閉鎖的な国。
LGBTへの理解が乏しい。
今まで積み上げてきたものは?
…なのに。。

振り回され傷つくメラブがせつなく電話のシーンが辛すぎた。

マリとの抱擁のシーンは溢れ出る優しさ。
全てを赦す素晴らしさ。このシーンが大好き。

壊れそうな硝子細工のような心。
すべてが一途な尖った憂鬱。
器用に生きられない人はどうすればいい?

大人になる前の猫〜豹へ。

澄んだ水面に投げられた銀色のコインと波紋のよう。
メラブの成長が痛みを伴う見応えだった。

ダンスシーンに見惚れる。



「ヨーロッパに行くならジョージアに行ってごらんなさい。いい所ですよ」
以前言われた事がある。
この作品に映る町並みでやはり素敵だなぁ、と思った。

ダンス
男性のダンサー、ダンスパフォーマンスに惹かれる。
ジャンルは様々。
セルゲイ·ポルーニン〜安井謙太郎…。
以前映画の作品で登壇した宮尾俊太郎さんの登場の美しさ。
ヒラリと壇上に上がる華麗さは華と品。
洗練されたプリンシバルの身のこなしはやっぱり違う。
黒のロングジャケット。
裾と髪の毛の先の調律。全てが整い過ぎた美だった。

男性ダンサーの佇まいは美しい
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