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失くした体のRIOのレビュー・感想・評価

失くした体(2019年製作の映画)
3.9
体のもとへと戻るため街をさまよう、切断された右手の旅と、

右手を失うまでの、男の淡い恋愛劇。

2つのストーリーが交錯しながら、ある一点の答えへと辿り着く。

どうやって男は右手を失ったのか?

その構成の仕方は、メメント的と言ってもいいのかもしれない(メメントほど難解ではないけど)

観てて、1番驚いたのが、右手のキャラクター性。
視覚や聴覚があるらしく、旅の途中で見たもの、聴いたものが、男の過去を蘇らせるような、交錯するつくりになってるんだけど、

戸惑いだったり、恐怖だったり、そういった感情表現が、表情がないのにも関わらず伝わってくるし、どこか寄生獣のミギーのような愛くるしさがあって、全然気持ち悪く感じない。

蜘蛛みたいに這いつくばってる、目も口も無いただの右手に愛着が湧くなんて、凄すぎませんか?

手描きのアニメーションも独特な味が出てて凄く良かったし、ベースとなる暗いトーンの中にもユーモアが散りばめられてて、全然飽きないし、退屈に感じない。

旅を通して様々な感情を経験し、蘇る記憶に思いを馳せた右手が、男にそれを繋ぎ止め、

大切なものを失い、様々な後悔を味わった男は、人生を変えるために前向きな決断と勇気ある行動をする。

重苦しい展開が続く中で、最後は微かな希望を見せてくれる、とても品のある素敵なラストでした。

本作は、世界的に高い評価を受けてる作品だけど、娯楽的な面白さはあまり無いです。
どっちかというと、ポスターにもある通り、映像表現が織りなす人生讃歌を描いた”アート作品”って感じ。

「ファンタスティック・プラネット」が好きな方におすすめな作品です。
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