Jaya

ドリー・ベルを覚えているかい?のJayaのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

1960年代のサラエボで催眠術にハマる少年ディーノがチンピラのシントルの女ドリー・ベルを部屋に匿うことになり惚れ合うけれどそうは問屋が下ろさないお話。家の敷地がよく分からない…。

旧ユーゴの実生活はよく知らなくとも、人々の細やかな演出から醸し出される猛烈なリアリティが凄まじい。特に父マホと弟ミドが余りに素晴らしいです。無愛想だけど実は優しい共産主義者のマホ。

生き生きとした人々のなかで、一人超然とした表情のディーノの雰囲気が全てを統合しているようにも見えてしまう。舞台を眺めたり、歌を歌う表情のなかに僅かな変化が見て取れるよう。

生命力を強く感じさせるような、諧謔のあるカットの数々が途方もなく美しかったです。冒頭、スピーカーを見上げるディーノから心を鷲掴みにされました。

カット割りやシーンの繋ぎも独特な諧謔があり、彼らの世界の現実感のなかにどこか非現実感が漂うよう。ウサギを買う男など流石によく分からない描写も。ボシュニャクの伯母は実生活の反映かな。

旧ユーゴならではの事柄については見落としがあるのかもしれませんが、それでも語り過ぎないなかに普遍的な人生の一幕が多く象徴化されていて、このような青春の描き方もあるのかと衝撃を受けた名作でした。
Jaya

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