Fitzcarraldo

ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男のFitzcarraldoのレビュー・感想・評価

4.7
2016年1月6日のニューヨーク・タイムズ紙の記事"The Lawyer Who Became DuPont's Worst Nightmare"(デュポン史上最悪の悪夢となった弁護士)を原作に、環境活動家の顔をもつマーク・ラファロが「映画は世界中の人たちに届く力がある。ある特定の団体と関係なく、概念的な防衛や、政治的な防衛を促すことができる」と自ら製作、主演を担当し、トッド・ヘインズ監督へのオファーまで自ら電話で直訴。企業名、登場人物など実名で登場する実話に基づくリーガルドラマ。


戦車の撥水力向上のために作られた軍事技術を応用したのが、水から油から料理から何でも強力に撥じくテフロン加工のフライパン。汚れがこびりつくことなく、洗うのが簡単で主婦の台所のお供に重宝されているが…

このテフロンにPFOAが使用されていて、これが一度でも体内に入ると決して分解されることなく永久に体内に残るという。

世界のほぼ全ての人の中に既にもう蓄積されているという…ホラー映画より一層と恐ろしい現実。

そして、それが発癌性のある有害物質であるということを40年間も隠蔽していたデュポン社。

これがまたさらに恐ろしい。

企業は社会のために貢献すると思うなかれ。企業は自らの利潤の追求しか考えず、単に売れて儲かればいいのだ。これが世界中を席巻した資本主義の成れの果てと云える。貧富の格差が広がり続け、一部の資本家だけが富を独占する。

このことを決して見誤ってはならぬ。

正規だろうが非正規だろうが公僕であろうが、資本家でない限り自分の時間を切り売るするしかない囚われた奴隷と何ら変わらない。

資本家の富の繁栄のために働くことが馬鹿馬鹿しくなるし、自分もその一部に加担してるかと思うと気が重くなる。資本主義のシステムの中に生きていれば自ずとそうならざるを得ない。

やれやれだぜ…。

だからといって、第101代内閣総理大臣である岸田文雄が掲げる「新しい資本主義」に何ら期待もできない。

その新しい資本主義の中身はというと…具体策は特になく、とにかく「新しい資本主義」と唱えるばかりで、何らその道程を示さない。

国会答弁を見れば、彼が如何に無策で無能なのかがよくわかる。こんなポンコツでも支持されてしまう日本国民全体の教養の無さというか…文化的な質の悪さというか…

かたや野党第一党の小川淳也には『なぜ君は総理大臣になれないのか』で、人柄や誠実さに騙されて感動してしまったのだが…

彼が立憲民主党の総裁選に立候補するや、誠実の押し売りというか…街頭に立ち、国民と対話をして庶民派をアピールしているが…それもポーズでしかなく…街頭で話を聞く時の顔、その顔だけはとても親身に取り繕ってはいるが、その返答・回答の内容の無さ…人間としての底の薄さが露呈してしまって、それでは総理大臣になれるわけないわな…と思ってしまう。

ポンコツ安倍晋三が2回も総理大臣になれるくらいの国だから、可能性はあるかもしれないけど…。

小川淳也は話す時に、トランプ元大統領の真似をしてるのかどうかは定かではないが、両手を頻繁に前に出してダチョウ倶楽部のヤー!のような手つきで話すのは早々にやめるべき。

単にパフォーマンスでしかないし、それを敢えて狙ってやってる癪に触る。

真剣に何かを伝えたいなら、その手は余計だ。手なんか動かしてないで、自分の言葉に声に語りに集中すべき。

話が飛躍しすぎた…。


「環境アシスト」より転載

PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)/PFOA(ペルフルオロオクタン酸)は直鎖状に並んだ8個の炭素原子すべてにフッ素原子が結合しており末端にスルホン酸を有する構造がPFOS、カルボン酸を有する構造がPFOAとなります。
PFOS/PFOAは分子構造内に含まれるC-Fの結合は非常に強固であり、光、熱及び生分解を殆ど受けない性質と同時に水にも油にも溶けやすい性質を有するため熱や光に対して耐久性の必要な場面で使用される界面活性剤として利用されていました。

PFOS/PFOAは光や熱に強く分解しにくく水にも油にも溶ける界面活性作用があることからめっき浴のミスト防止剤、塗料のレベリング剤、一部の消火剤、殺虫剤、フォトレジストなどに使用されていました。
PFOAはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン、一般的にテフロンの商品名で知られている)の原料として使用されていました。

炭素とフッ素の結合力は非常に強くPFOS・PFOAはこの結合を多く持っているため、熱や化学物質に対して強く、光を吸収しないなど非常に安定した難分解性の化合物です。更に親水性と疎水性の両方の特性も持っております。しかしその特性が逆に問題となり、環境中に放出されても分解されずに残留し世界中に拡散してしまいました。また水にも油にも溶けるため野生動物や人体にも蓄積していることが報告されています。生体蓄積性があり長期毒性の疑いもあることから、近年国際的な規制対象物質となっております。

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気になる方は、ご自身のテフロンのフライパンを調べることをオススメします。

ウチにあるテフロンのフライパンには何も書いてないので、このテフロンがPFOAを使ってるのかどうか判別できない。

フライパンなど家庭用品の製造販売を行うメーカーでは正式な規制以前から、PFOAを自主的に使用しない動きをとっているところもあるが…

メーカーの『PFOAフリー』という表示そのものにすら疑念をもってしまう。こうなってくると非常に生きにくく、ノイローゼになり兼ねないので、そこそこに。

こういうことが実際にありましたよ、それは自分らにも関係してくることなんだよ、ということを、知っていることが大切。


日本で規制が施行されたのは、2021年(令和3)10月22日。

こないだやん。

このタイムラグも末恐ろしい…



マーク・ラファロ
「トッドとのコラボレーションは本当に最高だった。彼は人間の内面に常に敏感で、それを引き出す才能があると思うんだよね。それを露骨に語ることなく、ね。それがすごく大事だと思った。というのも、僕が演じた人物は、感情を露骨に表すタイプの人ですはなかったから」

露骨に語ることなく…これですよこれ。

製作側、要は金を出す側が、どれだけこのことをわかっているか?営利目的しか考えない日本の映画界の悪しき習慣は、ここの理解のなさだろう。

登場人物に何かあれば、すぐ水の中に入ったり、壁や机に当たり散らし喚き散らす。超安易で稚拙な演出を未だに平気で行うアホ丸出しで幼稚である。

日本人こそ、奥手で控えめで空気を読み、黙って忖度ばかりするはずなのに、映画になると途端にワーギャー喚き散らすのは一体どういう了見なんだろう…

Netflix版の『新聞記者』も話題であるが、この予告だけでも既に露骨な部分が垣間見れる。

綾野剛かな?顔がよく見えないが、机をガンガン叩いて怒りか何かを表現している…これがTHE露骨といえるし、日本映画界に蔓延る悪しき伝統芸能にさえなってしまっている。

この瞬間、途端に見る気が失せる。


いつから露骨に語るようになったのか?

露骨というか…もうなんなんだろうね。幼稚というか大袈裟というか全体がアニメ化してるのかな?

クールジャパンといって日本が世界に誇るお家芸はアニメなんだと決めつけて、祭り上げられた弊害がここに極まる。


マーク・ラファロ
「ロブ(マーク・ラファロが演じた人物)の気持ちは、見ていれば分かるものになっていると思う」

そう!これだよ!露骨にやらなくても、見てれば分かるんだって!これがグッとくるのよ。


濱口竜介監督作の『ドライブ・マイ・カー』で、サンルーフから煙草を持つ手を外に出すシーンがあるが…これも露骨。狙い過ぎていて非常にこっ恥ずかしくなる。

この画をフレームで切る勇気。
若い人からしたら、なんら違和感もないのかもしれないが、私からしたら照れてしまう。

なので、"Dark Waters"はその逆のことが云えるかもしれない。若い人たちからしたら、露骨なところがない為に退屈と思ってしまうかもしれない。感じ方はそれぞれの主観だから、一括りには云えないのだが…

露骨なところなく、静かに立ち向かっていく姿に感動するし、いい歳して尚も自分もこういう男になりたいと強く思い起こさせる力のある作品だと思う。



マーク・ラファロ
「恐らくこれはアメリカ史上最大と言える隠蔽の実話だ。しかも、世界中の人に影響を及ぼす。それなのに誰も知らないと思ったんだ。
僕が演じたロブ・ビロットは、僕の知る限りで、最も無私無欲で、最も控えめな、最も美しい人だと思った。テレビを点ければ、自分のために人を踏みつぶす人ばかりが目につく時代なのにね。
PFOA(ペルフルオロオクタン酸)は世界中にある。僕らみんなの体の中にもある。永遠に存在し、一度体の中に入ったら二度と出ていかない。そして、主要な病気六つとすべて関係しているんだ」


テレビに限らず、YouTubeでもSNSでも、人を踏みつぶすような人が目につく。自分至上主義というのか…自由をどこか履き違えたようなこの流れは、より拡大していくばかりで止めることは不可能な気がする。



マーク・ラファロ
「彼(ロブ)がヒーローなのは、僕らは彼みたいな人にはなれないと思うからこそだし、正義は勝つと信じて、この道を突き進むために多くの不可能と思える難しい決断をしたからだ。彼は僕らが想像しているような分かりやすい典型的なヒーローではない。彼がヒーローになるまでには、多くの反対意見をぶつけられることになる。ときにはありとあらゆる方面からね。それこそ、本物のヒーローの旅路だし、最高のストーリーテリングでもある。
 ロブは、僕らが憧れて、なりたいと思うような人物だからヒーローなのではない。僕らはやりたくない、できないような、やりたくないと思うようなことをやってくれているからこそ、彼はヒーローなんだよ。または彼が選んだ道がいかに困難なのか、いかに無理をしてその道を選んだのかが僕らにも分かるから、彼はヒーローなんだと思う。彼は自分の周りの人たちがより大きな家に住み、より素晴らしいキャリアを積んでいるのに、その真逆を進んでいる。物欲とは真逆でそれを犠牲にしながら、むしろ精神的な世界の旅をしているんだ。最終的に彼の極めた道は、いかに正しいことをするのか…というそれに尽きる。どの時点でも、彼が挫折する可能性は何度もあった。でも彼は進み続けた。正義と公平がいつか勝つと信じていたから」



マーク・ラファロ
「僕らは、僕らの生活よりも企業の利益のために決断が下されている体制の中で生きているということ。それはもう誰もが日々感じているんじゃないかと思うんだ。場合によっては違法なことであっても、政府がそれを隠しているんじゃないかと疑うようなこともあると思う。例えば原子力発電所に災害が起きた時や、またはオピオイド危機、モンサントによる食品への被害、地球温暖化が起きていて企業はもう何十年も前からわかっているのに隠しているとかね。
 同じような事は、どこででも何度も何度も起きていると思う。そしてそれによって被害を受けるのは、いつだって貧しく立場の弱い人たちなんだ。ただ、今、僕らはそういう事実にようやく気づいたんじゃないかと思う。そして、それに気づいた僕らが、これからどう対処していけばいいのかという決断を迫られている時期に来ているんだと思うんだ。
 今、草の根運動的に何かが起きているように思う。そうやって考えると、この映画は、ある農場についてだけ語っているわけではなくて、大きなシステムについて語っていると思うんだ。つまり僕らのより良い暮らしよりも、企業と彼らの利益が優先されるシステムについて語った映画だ。さらに僕らのより良い暮らしよりも、政府が優先されるシステムについて語った映画なんだ。世界中で起きていると思うよ」

すべて語ってくれている。
これが総括だろう。


アン・ハサウェイ
「この映画で私が気にいっている事は、"この次に何が起きるのか…"ということ。次に起こる事は…"私たち"。私たちが立ち上がらないといけないということ。私たちの地球の為、お互いの為、そして自分自身のためにね」

みんな素晴らしく客観的に自作を振り返ってますな。


トッド・ヘインズ
「ウィルバー・テナントはタフだった。ロブ・ビロットが自分の仕事、評判、家族、メンタルヘルスを危険にさらしてまでこの訴訟を引き受けた時でさえ、ウィルバーはデュポン社から和解金を受け取るだけでは満足せずに、真実を公表することを望んだ。世界中に知らせることを望んだんだ。
 これは社会的正義を目指す重要なムーブメントの全てに当てはまることだ。まずは誰かが"ノー"と言うことから始まる。
"僕はこんな事は受け入れられない"
"これは間違っている"
"僕は自分の安定した生活、信用、そして生命をかけ、はっきりと主張する"
そう言って立ち上がる人たちがいる。だがそういう人たちは必ずしも訴えるための手段や資金、特権を持ち合わせていない。だからこそお金や特権を持つ人たちも含め、みんなが力を合わせ、そして驚くべき闘争に加わり、そのストーリーを警告として世界に広めていくべきなんだ」


"僕はこんな事は受け入れられない"
"これは間違っている"
"僕は自分の安定した生活、信用、そして生命をかけ、はっきりと主張する"

こんなことを言ったところで、誰も分かってくれないだろうし、恐らく阿保扱いされて誰からも相手にされないだろう。
それでも折れずに立ち向かうことの強さ。


香港デモ
ミャンマーデモ
トランプ派か反トランプ派か
右か左か
ワクチン打つか打たないか…

どちらを選ぶのも個人の自由ではあるのだが、その目を確かなものにする必要があるだろう。もし裸眼でもよく見えないのなら眼鏡をかける必要がある。

相手の言うことを鵜呑みにして全て信じてしまうことが、どれだけ恐ろしいことか。そこまで信じられるという意味では、純粋であるとも言えるのかもしれないが…

手離しで簡単に信じてしまうのは、戦時下と全く同じ。知識人だけは、どれだけ馬鹿げたことかを知っているから反論するのだが、みんな逮捕されたり処刑されたり…

対抗する手段を知らない人たちだけが、大衆となり、世論となる。

こうなると、もう全てが徹底的に破壊されない限りどうにもならんだろう…。

戦後日本は、まさに徹底的に破壊されて立ち直ったはずなのに…また同じことを繰り返してる。本当に馬鹿。

なぜ先人たちの失敗から学ばないのか?



アインシュタイン
「偏見のある社会環境で、冷静な意見を述べられる人は限られている。それどころか、意見を持つことさえ出来ない人がほとんどだ」
Fitzcarraldo

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