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アトランティスの作品紹介

アトランティスのあらすじ

ロシアとの戦争終結から1年後の2025年。戦争で家族を亡くし、唯一の友人も失った孤独な主人公セルヒーが、兵士の遺体発掘、回収作業に従事するボランティア団体の女性との出会いをきっかけに、自らが“生きる”意味と向き合っていく姿を描く。死に覆いつくされた世界を漂流する生のはかなさと、そこに芽生えた愛の尊さをサーモグラフィー・カメラが鮮烈に映し出す。

アトランティスの監督

アトランティスの出演者

原題
Atlantis
製作年
2019年
製作国
ウクライナ
上映時間
109分

『アトランティス』に投稿された感想・評価

hiropon

hiroponの感想・評価

3.7

2019年 ウクライナ製作 〜 2025年終戦
後の ウクライナの未来を舞台に描かれて
いくディストピアムービー __ 🇺🇦💥

ロシアのウクライナ侵攻が きっかけとな
るクリミア侵攻 〜 ウクライナ人 外科医
の捕虜 …… 様々なテーマから始まりを映
した『リフレクション』と 一緒に鑑賞し
ましたー …… 🤔⁉️💥

2025年 〜 3年後のウクライナ🇺🇦に 未来や希望は 全く無かった様に映る 残酷な現実 …… 😮‍💨💥

誰もにPTSDが潜む 蘇る些細な葛藤で ”死” へのスイッチが直ぐに入る 少しの余裕も無い 生き残ってしまった不幸が 神を恨む …… 😮‍💨💥

『アトランティス』って …… 何というタイトルなんだと思う 作品としてよく分からない 分かりたく無い 信じたくも無い現実 生きる意味さへ分からない …… 🤔⁉️

『リフレクション』で見た子供達は 希望は未来は もういない ない …… 😔💥



✨✨✨✨✨✨✨✨✨✨✨✨✨✨✨✨✨✨
幽斎

幽斎の感想・評価

4.4
ウクライナ映画二本立て
2019年 4.4 Xudoznik アメリカ表記Atlantis 本作
2021年 4.0 Vidblysk アメリカ表記Reflection レビュー済(続編では無い)

ウクライナ映画人支援緊急企画として、Valentyn Vasyanovych監督作品上映会の盛り上がりを受け,全国でロードショー公開。集まった600万円近い想いは、支援団体International Coalition for Filmmakers at Riskへ寄付された。ヴェネチア映画祭オリゾンティ部門作品賞、東京国際映画祭審査委員特別賞。アカデミー国際長編映画賞ウクライナ代表。京都のミニシアター、出町座で鑑賞。

「アランティス」「リフレクション」共にValentyn Vasyanovych監督。直接的な関連作品では無いが、通して観ると監督の世界観、ウクライナの現状がとても良く解る。ニュースで見掛けるマリウポリの製鉄所とか、終ぞ知らない実体も登場。Andriy Rymarukは、其々SerhiysとAndriiと別の役名で出演してる。

ウクライナ映画なら結構見てる。レビュー済で言えばVáclav Marhoul監督「異端の鳥」。Ilya Khrzhanovskiy監督「DAU.ナターシャ」。Agnieszka Holland監督「赤い闇 スターリンの冷たい大地で」。観た作品ではMyroslav Mykhailovych監督「ザ・トライブ」。Boris Vasilyevich監督「青い青い海」。Benedikt Erlingsson監督「たちあがる女」。全てポーランド等の周辺国の制作会社の協力。

ウクライナ映画なので、どうせ何時もの戦争映画でしょ?と思われるのも無理はない。本作は近未来、SFを得意とするロシアのロコモーションと言える。ロシア侵攻が始まり戦争終結から1年後の2025年のウクライナ東部が舞台。PTSDに悩む孤独な元兵士が、遺体発掘のボランティアに従事する女性との出会いから物語が動き出す。観念的なロシア映画とは違う、自己再生を問い掛けるリアリズムが実に面白い。

東京国際映画祭に来日したValentyn Vasyanovych監督と言えば、Myroslav Mykhailovych監督「ザ・トライブ」撮影と編集を担当、ウクライナ映画史上最大のヒットを記録。カンヌ映画祭批評家週間でグランプリを獲得する等、世界的に大きな評価を得た。ウクライナでは本作を含め7作品を監督したが「Waltz Alchevsk」「Prysmerk」短くても傑作が有る、日本でも公開される事を望みたい。

冒頭の赤外線サーマルナイトビジョン。ゴーグル越しに捕虜と思われる死体を、兵士と思われる誰かが埋める。つまり局地戦は続いてる様に見える。誰が敵で誰が味方なのか、差分を明確にしない事で、逆説的に敵とは誰なのか?を問い掛ける。戦争で誰が味方か分らない、リアリズムを追及するロシア映画と酷似する。主演Andriy Rymarukは、戦争経験者で、他のキャストも戦争に関わった人物を起用する事で、シーンに嘘偽りの無い事を、観客に鮮烈に記憶させる。因みに劇場で途中退席される方も居た。

ニュースで見掛ける地名もガンガン登場。ウクライナ東部ドンバスは隣接するロシアの庇護を受け、ドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国、親ロシア派の反乱軍と、ウクライナ政府軍の未承認の戦いを描く。現在進行形のウクライナ紛争とは違う事も判る。ウクライナ紛争は、NATO加盟を巡る争いが発端で、プーチン大統領は幾らかの地域を、クリミアと同様に実効支配出来れば終結させる。ウクライナ南東部アゾフ海沿岸、親ロシア派武装勢力が支配する「陸の回廊」が真の目的。

今見るべき映画と云えるのは、ドネツクとルガンスクの帰属問題が根底に有り、紛争がエスカレーションする事で、ロシア軍は首都キーウから撤退、東部に再配置。戦況はロシアが有利、だからこそウクライナ軍から見れば矛を収めるは死に等しい。冬を迎えウクライナのエネルギー源を得意の長距離ミサイルで攻撃。ウクライナから停戦合意を取り付けたい思惑が見え隠れする。ミステリーでは現実世界を「Actual」と言うが、実際の,本当の、現実を映し出す正にアクチャルな作品と言える。

戦争映画では無く、近未来と言えるのはバックグラウンドの背景。ポスト・アポカリプスの世界感は、建物は廃墟のまま。着てるモノは古い軍服、近未来の真意は植物の描き方と言われるが、本作も生気の無いシーンが延々と続く。其処には人が生きてるコンポジションも感じない。ドンバスは紛争前から石炭採掘で水質汚染が深刻とニュースで見たが、環境汚染の主人公は「水」。水が無ければ植物も動物も人間も再活性化しない。戦争終結後でも、平和が訪れた雰囲気は微塵も感じない。

別な日に観た友人は劇場でグッスリ寝た。ロシア映画ほど諄くない109分丁度良い按配だが、後日私に「あらすじ」を聞くが、ハッキリ言って本作にあらすじなど無いに等しい。眠くなる理由はカメラワークと思う。固定カメラで広角のロケーションを長回しで撮った映像、最初の1時間は全て固定カメラのショット、合計でも28ショットで完結。観客の目線とカメラの画角がシンクロする、緻密に計算された構図が現実感をも麻痺させる。

原題「Atlantis」とは小惑星アステロイド。ロシアが惑星とすれば、アステロイドのウクライナは宇宙の塵の様な存在。だが塵の様な存在でも生きる権利は誰にも有る。印象的な死体に囲まれた中のセックス・シーン(劇場ではボカシ有り)。明日が見えない世界でも、前に進もうとする「愛」が快楽とは別の意味で力に成るかもしれない。サーモグラフィーが示す温もりは、人と人が織り成す長閑やかさ、死体に囲まれても子孫を残す強い意思。監督はドキュメンタリー畑出身、虚構と実像のボーダーラインを秀逸に描く。だが、本当の戦争は未だに終わりが見えない。

弛緩「Relaxation」と緊張「Tension」の現在進行形の二律背反を描いた異風な傑作。
netfilms

netfilmsの感想・評価

4.2
 長方形に四角く掘られた穴らしきものの中に、サーモグラフィで感熱した人間たちがおそらく死体らしきものを運び込み、埋葬する。このファースト・ショットの只ならぬ度肝抜くような雰囲気にすっかり魅了されてしまう。2019年に撮影された『アトランティス』はロシアのウクライナ侵攻をはっきりと見通し、予言していることに驚く。戦争終結から1年後の2025年を舞台にした物語は、2人の男の時代遅れとも言うべき訓練の様子を映し出す。ロシア兵に見立てた8つの立て看板を土に埋め、彼らの異様な銃声が辺りにこだまする。その様子は自主的に作られた軍隊のような苛烈さで観客に語り掛ける。撃たれた方もPTSDなら、撃った方も実はPTSDを患い、今もなお苦しみの只中にいる。残酷で無慈悲な時間は長回し映像により、観客にも主人公の焦燥の追体験を強いる。戦争で家族を失った元兵士のセルヒー(アンドリー・ルィマールク)は、戦争終結から1年が経った今もPTSDに苦しみ、魂の抜け殻のような日々を送っていた。軍隊の頃と地続きとなった製鉄所の描写が終わりなき戦争の後処理の過酷さを物語る。オレンジがかった溶鉱炉の炎の揺らめきに導かれるように、戦友で親友でもあった男は身を投げる。そこからセルヒーには二重三重の地獄の日々が待ち構えている。

 ヴァレンチン・ヴァシャノヴィチの奥行きを活かした四角四面のカメラは絵画的な構図の中に悲劇のキャラクターを放り込む。ほぼ厳格なフレーム構成とひたすら忍耐を強いる長回しはひたすら規律を重んじるヴァシャノヴィチの作家性を内外に知らしめる。イワンの死により、製鉄所の閉鎖を強いられたセルヒーは路頭に迷う。然しながら親友の死が神の啓示だったと言わんばかりに、内なる世界に閉じこもるばかりだったセルヒーが外の世界に立ち向かう瞬間、物語は生まれるのだ。アイロンの熱で自傷した男の熱は果たして再び感光するのだろうか?トラックの運転手となったうらぶれた男の姿は、車が故障し立ち往生していたカティア(リュドミラ・ビレカ)と出会い、失った使命感に徐々に目覚めていく。あえて会話を最小限に抑えたミニマムな物語は、遺体処理者の報告の様子を声高に伝える。気が滅入るような戦争の追体験は然しながらセルヒーに何らかの使命を与え、彼を突き動かす。それ自体が政府の指示を巧妙に外していることも興味深い。徹底してセルヒーやカティアの表情に肉薄せず、主に固定カメラのロング・ショットにこだわるヴァレンチン・ヴァシャノヴィチのカメラが雨の中の車正面に大胆に寄っていることに注目したい。ハンドルを握るセルヒーの手にカティアが手を重ねるショットの素晴らしさは残念ながら物凄い豪雨に阻まれ、モザイク状にしか確認出来ない。だがその描写には仄かな希望が香るのだ。二度現れるサーモグラフィによるショットはその大胆な所作に他ならない。

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