にくそん

ネヴィアのにくそんのレビュー・感想・評価

ネヴィア(2019年製作の映画)
4.0
ネヴィアがんばれ!っていうものすごく素直な気持ちで見た。外からどんなに過酷に見える生活でも腐ったりしないで、ネヴィアがネヴィアの道徳や価値観にしたがって行動しているのがすがすがしい。毎分毎秒、彼女のことが好きになる。

とにかく、ネヴィアがけなげ。道に廃車や粗大ごみが転がってるようなバラックに暮らす17歳なんだけど、父が服役中で母も既になく、祖母と妹の面倒を当たり前に彼女がみている。ごみ収集とか古着の再生とかで小金を稼ぐんだけど、洋服の売り先や近所のおばさんや叔母さんと当たり前に仲良しで、妹にめちゃくちゃ優しい。こんな町は出ていくんだと心に決めていても、周りの人にふてくされた顔を見せない。なんて、生きかたの美しい人なのか。ごみ収集用の壊れかけたカートに妹を乗せて、きゃっきゃいう幼い彼女を学校まで送り届けるシーンとか、幸せそうで、逆に胸がつまる。

金持ちの息子(性格の悪いヤツではなさそうなんだけど父親と一緒に悪いことで荒稼ぎ)から言い寄られ続けているのに、何度でもきっぱり断るところも好き。気を持たせて金を引き出そうとしないし、結婚して安穏とした生活を手に入れようともしない。勝手に押し付けられたプレゼントは売ってお金に換えるけど(笑)。

ネヴィア(ヴィルジニア・アピチェラ)の野生のバラみたいな美しさも見もの。彼女は心が、映画でよく見る17歳より少女なので、メイクなんかしたこともない(化粧品を買いそろえるのも難しいんだろうけど)。必要に迫られてやってみるけど下手くそで……というシーンでさえも美しくて、なぜか快哉を叫びたいような気持ちに。見たか、この子の美しさを!みたいな。なぜだかわからないけど。

ヴィルジニアも監督もサーカスで働いていた経験があるそうで、映画にもサーカスが登場する。小芝居パートの練習を一生懸命手伝うのがかわいくて、カバに水をあげるところもかわいくて、やっぱり泣きそうになる。

正直、どんなにひどいことが起きるんだろうと怖がりながら私は観ていて、その覚悟を使わないままエンドロールにたどり着いたとき、監督にすごく感謝した。ストーリーの起伏は小さめに終わったのかもしれないけど、映画からいいものをもらった気がする。
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