白鳩なんか喰い殺せ

れいわ一揆の白鳩なんか喰い殺せのレビュー・感想・評価

れいわ一揆(2019年製作の映画)
3.5
「これはね、森達也と面と向かって喧嘩した方がいいかもしれないけど。彼はテレビ出身でしょ?良い悪いじゃなくて。私達は映画ですから。彼には綺麗な絵を撮ろう、かっこいい絵を撮ろうという美学がない。私達は映画を作りたい」
原一男、第32回TIFFトークイベントにて

『ニッポン国VS泉南石綿村』製作のきっかけを「スランプに陥ってた流れで引き受けた。アスベスト問題については殆ど無知だった」と振り返る原一男じゃないが、原映画の美点は万人向けに作られているというか、扱われる問題についてよく知らずとも見始めることができる、今のところ?見るのが遅過ぎたなんてことはない点にあるから、…このページを開かないと出てこないここに書くのもなんだが…そこの貴方も原一男マラソンしてみてくれとまず言いたい。


『水俣曼荼羅』にやられ、原映画とは相性が悪いと思っていたものの、とりあえず監督作全て(曰く10年近い製作期間に痺れを切らした弁護団に途中経過的に作ってくれと頼まれ、完成させた『命てなんぼなん?泉南アスベスト禍を闘う』は見れず…)見返そうと決めた今年の上半期後半。本作だけは「れいわかぁ…」と見る気が全く起きなかったが、そんな理由で1つ欠かすわけにもいかず、ちょっとした会話を思い出したりダメならダメで意見を持てるからいっかということで今年下半期最初の映画に選んだ。
2019年、れいわ新選組の政策に端から興味ないと言う東京大学東洋文化研究所教授、安冨歩と映画監督原一男が現代の政治に対する怒りと新しい選挙活動を通じ「規制無しに選挙の全体像、人間群像を狙う」を銘打って映画を作るという248分。分かりきっていることだが自民党が悉く最悪だし、当時からぐいぐい伝わってくる山本太郎の信頼のしの字にも引っかからない浅さとれいわの室内集会の居心地悪さが記録されているのも特徴だ(後者2つは製作陣の意図とはやや異なるかもしれないが)。その時代の有り様を怒涛に生写せている原一男の代表作には及ばないが、無駄に口数の多いテロップ("日本立場主義人民共和国!!!⚡️"🤣)もグァダニーノ版Suspiria音頭も真っ青の爆笑Thriller音源も、製作布陣の違いもあってか他の原映画とは異なる印象が続きつつ対象への興味が突然滲み出たりと相変わらずで良い。カメラマンの個性が出てるのも珍しいね。やっぱり話し合いタイムは大切!

「子供達が誰1人泣くことがない、涙を流すことがない社会を今すぐ作りましょう」

例えば10歳ほどの子供との会話を、選挙のマイクを通して外へ流すシーンについて。安冨歩、圧力に一々食ってかかるのも最高。エンドロールの切れ味に加え、この人に惹かれたから気持ちおまけしてこの点数でもある。まあいつも以上に箇条書きになったけど仕方なし。これでも沸々と湧き上がった疑問を抑えて書いたつもり。気に食わないのはまずあれだな、馬に寄ってきた子供数人うちひとりがカメラの正面に顔を向け、その子に原一男が「こっちじゃなくて馬!あっち!」と笑いながら流す場面だな。まあ確かに邪魔だけどさ、覆い被さったわけじゃないし良いだろ別に!という気持ちがどうしても勝つ。

「馬に乗っている状況はその時だけのバーチャルかもしれないけどある種の光景は見える」