ひろぽん

はるヲうるひとのひろぽんのレビュー・感想・評価

はるヲうるひと(2020年製作の映画)
2.4
日本のとある島で、売春宿を営む3兄妹。店を仕切る暴力的な長男・哲雄の支配下に置かれながら生きる次男・得太は、持病を抱える長女・いぶきを見守る。閉塞空間で起きる哲雄の暴力と、遊女からの視線。さまざまな困難を抱え、暗い現実の中で必死に生きていく兄妹を描いた物語。


置屋が点在する閉塞された島で暮らすとある兄妹の日常を描いたお話。

店を取り仕切る長男の哲雄は、皆から恐れられている凶暴で凶悪な人間。その一方で、美人妻と可愛い娘の3人で普通の幸せそうな家庭を築いている。それなのに、遊女に対する性的搾取を続け、支配し続ける歪んだ行動は過去のトラウマ級の出来事からなのだろう。

弟の得太と妹のいぶきは、哲雄とは腹違いの兄弟であり、過去の出来事により2人に対する当たりが強い。過去に哲雄の父と、得太といぶきの母が心中したことによる恨みを2人にぶつけている。

得太は哲雄から暴力的な酷い仕打ちを受け、いぶきは兄妹なのにレイプされるという残酷な現実がとても見ていられなかった。


この置屋で働いている遊女4人は美人ではない人たちばかりで、持病で働けなくても女を売らず大切に扱われている、1番の美人であるいぶきに対する嫉妬がとても凄い。

凶暴的な哲雄に脅え、こき使われている得太をバカにし、美人のいぶきに嫉妬するという遊女たちの3兄妹に対する認識が明確に分かれているのが面白い。

この島の住人たちは、どこか生きにくそうにしている人たちばかり。一人一人個性的な人の集まりで、恐怖に支配され重く息苦しい毎日を、みんなで必死になって協力して生きている。

3兄妹の過去の秘密が明かされる終盤からの展開がとても切なかったが、ラストは絶望した世界からほんのり希望が見える終わり方だった。

まともに愛を受けて来なかったから、愛とは何なのかを他人に問うんだろうな。一番愛を知っていたのは、陽気なミャンマー人だった。

得太の叫びは、叫ばないと自分を保つ事ができなくなってしまうからなのだろうか…

福田組の佐藤二朗と山田孝之がこんなにも重苦しくシリアスで笑いのない作品で迫真の演技をするのがとても新鮮だった。特にアドリブ多めでふざけ倒している佐藤二朗が真面目にクズ野郎の役をこなすのはギャップがあり、とても驚いた。こういう路線も行けるんだなと。

向井理のチョイ役での出演の意味は全くなく、ただの無駄遣いな気がした。

この島のモデルは渡鹿野島らしい。

島にいて絶望しているなら、島から出て心機一転人生をやり直せばいいのになと思う。
重苦しい内容だから、元気な時に鑑賞をオススメする作品。
ひろぽん

ひろぽん