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ニーナ・ウーのBigsのレビュー・感想・評価

ニーナ・ウー(2019年製作の映画)
4.2
第20回 東京フィルメックス

僕はかなり面白かったです。
Me tooムーブメントに触発されながらもそれをストレートには描かず、「パーフェクトブルー」や「マルホランドドライブ」等のパラノイアなスリラー映画の系譜にあてはめる。それでも、やはり鑑賞後はこの男性原理的な世界が如何に気持ち悪く、不快で残酷かという批評的な視点が残るように感じた。

まあ「パーフェクト〜」、「マルホ〜」の名前を挙げたくらい、これまでも語られてきたような内容なんですが、それでもこの"どこまでが現実かわからない"クラクラする感じは非常に面白かった。
カットがかかっても物語の中にいる、実際に事故ったように見えて映画のエンドロールだった、ある人物に執拗に追いかけられる(ワンカットで振り返ったら顔が変わってるのは良かった)、撮影現場かと思ったら夢から醒める、あるホテルの一室に向かうシチュエーションが繰り返される、シーンの飛躍、劇中劇が主人公の置かれた状況とリンクする等々。
何が現実に起きたことで、何が夢や映画なのか、観客も錯乱していく。その居心地の悪さ、気味悪さがそのままこの世界を形作っている男性的な暴力性に向けられるよう。

一番気に入ったシーンは、劇中劇で行われる3Pのリハーサル?場面。「感情を入れずにポージング」の掛け声とともに、5つのポーズをこなしていく。彼女の意思に反する行為、それもかなり暴力的に見える行為を強要される様が、気持ち悪く嫌な形で見せつけられた。
そしてラストカット、こういうことがあったのではという観客の想像を最低最悪な形で直視させて幕を閉じる。決して映画の中で閉じない感じ。性行為に対する彼女の意思を無視しただけでなく、彼女の性的嗜好とも全く異なるため、その残虐さが際立つ。
あとは、「サスペリア」や「ネオンデーモン」にも近い、真っ赤な照明の部屋。

主演のニーナウー役の方が良かったなあ。顔の印象がどんどん変わっていく。配信の場面なんかは可愛らしいけど、疲れたおばさんのように見えることもあって。あと、何か起きたときの心底不快そうな表情。
あとは身体は非常に細いがそれなりに肩幅もあって、何か作り物感というか、誰かに無理に作られた人形のような感じがあって良かった。
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