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Share the Painのkazataのレビュー・感想・評価

Share the Pain(2019年製作の映画)
2.5
U-NEXTの見放題にも登場したのを知り、中嶋駿介監督にフォローして頂いた縁もあってウォッチしましたが……感想はNo忖度で正直に!m(__)m
(監督の実体験を元にした経緯も拝見しました)

そもそも論として「性暴力の被害者になることで性犯罪の加害者にならなくなる」という前提条件がおかしいと思うんだけど(虐待の連鎖は往々にして存在するしPTSD的な問題も発生するだろうし)……まぁそこの部分を百歩譲って呑み込んで、「男が挿入される痛みを知ることで性行為におけるオス的な暴力性を自覚する」という出発点の面白さはイッツOK。

SP法というおかしなシステムが存在する管理社会という世界観も、漫画『恋と嘘』を初めて読んだ時に「恋愛=心すら国家に管理されてしまう社会の気色悪さ」に大興奮した身としては大歓迎。
(『恋と嘘』の実写映画版は本質的な面白さがスルーされている気がして微妙だった思い出…)


(以下若干ネタバレかも↓)


だけども……
結局のところその狂ったシステムを受け入れる方がいい(=システムを肯定している)ように見えてしまう展開こそが大問題かと!
未熟な思考&行動を持つ青少年を教育じゃなくて暴力で矯正しようとする精神性(=主人公も結局はそれを選択してしまうことで容認しているように見えること)は全く理解も共感もできないかな。
(繰り返しになるけど「痛みや恐怖心を体験しないと理解できない」わけではないし「体験しても加害側になること」だってあるわけで)
(皮肉として表現したいなら「主人公がSPを受けたけど彼女とはセックスできずに別れることになっちゃう…」って流れの方がしっくりくると思う)
(「悪法もまた法なり=だから従うべきだ」というソクラテス由来の態度が法治国家の大前提みたいに日本では思われがちだけど、そもそもそれも皮肉として用いられた表現だから!古代ギリシャの哲学者たちだって「悪法は改正すべきだし、そもそも不条理な悪法なんて作んなや!」って立場だから…)

どうせなら……
「異性間だろうが同性間だろうがパートナーのことを思いやる気持ちの大切さ」とか「"脱挿入至上主義"(=性的興奮の得方の多様性)的な思考や行動」をあの手この手で少年に教えようとする"性交人"の物語こそを見たかったかな。
(「かつては自分も同じ考えだった」という葛藤や自己矛盾に苦悩する性交人側の話があると、二人が偶然出会ったことで胸熱なドラマが生まれた気がする…)
(ハイパー管理社会が前提な世界観だから無理か…)
(一見オープンマインドな考え方を提示しているようで、結局は旧態依然の古臭い価値観に縛られている気がして仕方ないと言うか…従来のヤリチン男子マインドを女子に転用しただけと言うか…)
(谷崎潤一郎じゃないけど関連してきそうな精神的or身体的なSM要素もスルーだし…)

それと……
ギフトの中身はローションだけじゃなくてコンドームも詰め合わせてあげて!

童貞映画として見るなら……
冒頭カットは"怖々しながらキスする瞬間"を描くべきなのと、"初キスができたことの喜び=主人公のリアクション"の絵が欲しいところ。
(優しいんじゃなくて単に臆病なだけという主人公があんなカワイイ子と付き合えていることが不思議だけど…)

余談ですが……
ベイスターズファンとしてはロバート・ローズの応援歌(=現チャンステーマ曲)からのサヨナラ勝ち展開が熱かったです(笑)
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