「ウィンター・ブラザーズ」に比べて格段に見やすいのは、ひとえに孫娘の存在のおかげ。住居侵入した馬(この子たちも癒やしの存在)にきゃーきゃー喜び、生きた鮭をテーブルに打ち付けて撲殺する。この孫ちゃんの物怖じのなさが画面全体に明るさをもたらしていた。「こんな孫と暮らしてみたい」と思いつつ、起こすときは踏まないでほしい。
警察を辞めたあとも我が物顔で入り浸るとか、娘婿に対する絶妙な排除的態度とか、なにげに嫌な部分もちらほら。妻が生前浮気した相手に対しても最初から最後まで陰湿だったけど、あのままポンコツクリニックに通いつつ「自分が作り上げた妻の幻影」を抱き続けていたら、いつか自死したかもしれない。
妻が死んで以来もしかしたら初めて流れたのかもしれない涙が「そうだった、おまえは素敵にいやらしい女だった」って思い出したことへのうれし泣きに見えてうるっときた。
叫ぶことも泣くことも生きるうえで大事なこと。