残像

グッバイ、ケイティの残像のレビュー・感想・評価

グッバイ、ケイティ(2016年製作の映画)
2.8
主題的にも手法的にもラース・フォン・トリアーからの影響を感じる。特に思い出すのは「奇跡の海」。もちろん「ダンサー・イン・ザ・ダーク」も。

しかし「奇跡の海」のベスには信仰が、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」のセルマには音楽があったのに対して、ケイティには何もない。サンフランシスコに行って美容師になる、という茫漠とした目標があるだけ。アリゾナの風景と相まっておそろしいほどの虚無感に襲われる。

またジム・べルーシ演じるベアーという、ケイティにとっては父親のような、自分を認め守ってくれる存在であるようなキャラクターも、結局はケイティを金で買っているということにも、もはやどこにも戻ることのできないケイティの絶望を感じた。

ただ全体として、エキセントリックでエモーショナルな映画の作りになっていてあまり感心はしなかった。感じるところはあるものの、自分の観たい映画はこれじゃない。

ひとつだけ、「奇跡の海」を思い出した時点で予想はしていたのだけれど、ラストのラストに仕掛けられた小さな奇跡は、それはそれほど作為的には見えず、むしろゾワッゾワッと鳥肌が立った。そこだけは悪くなかった。
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