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大コメ騒動のmasayaのレビュー・感想・評価

大コメ騒動(2019年製作の映画)
4.0
 時は大正、高騰を続けるコメ価格に立ち上がった富山の嬶(かか)たち。高尚な思想や借り物の正義感からではない。このまま口を噤んでいては大事なものを奪われ続けてしまう、彼女たちの必死さが社会を動かすまで。
 全国に波及し、時の政府を動かすまでに至った行動のパワフルさ。その力は土地の性質といったものに帰するものなどではなく、夫や子供を奪われ、身体の自由も発言の場も奪われてきた女性たちの決死の主張だったことがわかる。強くならざるを得なかったのだ。聖人君子などではない、ただ家族に腹いっぱいご飯を食べさせたい。貧しさの為に生命の危険に晒したくないその純粋で真っ当な願いが人びとの共感を呼び、社会を少しだけ前進させた歴史を我が国が持っていることは、民主主義の国として誇りに思って良いことだと思った。
 女たちが中心に徒党を組んで強訴に向かう中で、混ざっていた男性だけが捕縛され警察に連行される場面があった。女性が声を上げても、聞く耳さえ持たれず透明視されていたのがショックなシーンだった。根深い差別の形で、これは現代にも確実に残っているんだよな。
 コメ騒動、シベリア出兵とそれに乗じた投機の為という自分たちと無関係な理由の価格高騰である上に、自分たちが命がけの重労働で地元米を積み出していることがその状況を助けているという、強烈なジレンマを抱えたことが富山の女たちが立ち上がるきっかけになったのだろうか。

 観た後思い出したのは「未来を花束にして」ほぼ同時期の英国の女性参政権運動の活動家の物語だけど、共通するのは主人公が政治信条というより貧しくて平凡な女性がギリギリの選択で行動に身を投じたこと、そしてその主張は当初無視され続けたこと。これ、ビジュアルも意識しているよね。
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