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グリプスホルム城のnickのレビュー・感想・評価

グリプスホルム城(2000年製作の映画)
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2021/11/04
Amazonプライム

この映画の時代背景・情勢がわからないと “映像” しか伝わらないだろうな、というのは観終わってから思ったこと。 そういう意味では大衆娯楽作品としてはいかがなものかとも。 個人的には冒頭の条件は多少なりとも持ち合わせていたので味わえたと思う。

今は絶滅したような「貴族」というのは凄い存在だったんだな。 庇護したい相手を金銭のことは考えずに手元に置いておける。


作品自体にどうこうじゃないのだけど、オープニングでしっかり読めるように打文中のタイプライターの文面にカメラが寄っていく。 ドイツ語はまったくわからないから字幕頼りなのに字幕がない。 始まってすぐに突き放された感じ。

要る内容かどうかはこっちで判断するので何らかのフォローが欲しいわけで。
Tamerlan, mein liebesKind, ja Kuchen I
So einer Tamelan, den meöht'ich wohl auch.
見ながら打って Google翻訳したおかげで「愛するタメラン」への文章だということが何となく判明。 ここでやっと一時停止を解除してみると… ん? 字幕で「ティムール」と歌詞が表示されているところ「タマーラン」と歌ってる、Tamerlan の事かと気づく。 タイプしていたのは ❝ティムール あなただけよ / 私もティムールのような男が欲しい❞ の部分だったのか。 ここで歌詞に注目していると「ティムール」と「ティミール」が居てわけがわからない。 でも共に Tamelan と聴こえる…。

とりあえず冒頭のタイプのシーンでは「ティムール あなただけよ…」と歌詞を出すか「<歌詞をタイプしている>」と出ていたらすんなり観られたと思う。

まだ開始5分も経たないのに 40分が過ぎようとしている…。 観続けるか大いに迷ったが、もう少し観ることにした。


汽車の中のシーンの白いシャツに縁取りがほとんどない白い字幕、これにも閉口したが一時停止をするとグレーがかるので字幕が読み易くなった (Amazon の場合)。

1:28:05 ❝愛と優しが溢れる❞ って何? これで「あいとやさし」以外の読みがあるの?

クルト・トゥホルスキーは実在のユダヤ人ジャーナリストで日本語版 Wikipedia にも項目がある人物。 ドイツの激しい不況の中、後にナチスが汲み取って “形” にしたユダヤ人へ向けられる感情が強まっていくのを肌でひしひしと感じたに違いない。 映画ではサラッと触れられただけのその死も執拗なナチスが手を下したという説もある。

この作品は人々がナチスに国を “明け渡して” しまったところで終わる。

キャバレーに勝手に入って来た六芒星を下げた幼い花売りの女の子は大人になれなかったんじゃないかと思うと切ない。

煽情的なクラリネットが印象的なサントラ。 全編を通じて木管楽器による感情の揺さぶりが特徴的だと感じた。

複葉機が最も完成され、美しくあった最後の時期。
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