ラベンダー

すばらしき世界のラベンダーのレビュー・感想・評価

すばらしき世界(2021年製作の映画)
3.9
原作は佐木隆三の『身分帳』。映画のタイトルの『すばらしき世界』とはどういう意味なのだろうか。

役所さん演じるところの三上は、客観的に見ても短気でケンカっぱやいところさえなければかなり魅力的な人間だ。
たまたま不遇な環境で『人生の大半が刑務所暮らし』になってしまったけど、彼の人柄ならどんな世界にいても(結果的にはヤクザの世界でも)ちゃんと人望を得て、周りの人間達から愛されて生きていける強さがあると思った。
出所後に新しい生活の中で身の置き所がなくて、「あんたも誰かがほめてくれる場所におりたかろう?」と言って元の仲間のところに戻っていくシーンには涙が出た。ほんとにその通りだと思ったし、どんなに反社会的集団だろうと、三上にとってはかけがえのない場所と仲間だったんだろう。

「すばらしき社会」は無理でも、一人ずつが自分の生きている場所を「すばらしき世界」にすることはきっとできると思う。
三上のような魅力的でエネルギーのある人間は、何かが違っていたらきっともっとすばらしい世界に生きられたはずなのにと思った。

2024/6