ネブュラー

花束みたいな恋をしたのネブュラーのレビュー・感想・評価

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
5.0
こんなに場所ごとに、そして店舗までどこか分かってしまう映画もないな。。
明大前やら下高井戸やら、あの甲州街道沿い、多摩川沿い、みなとみらいの風景。
景色が血肉となっているからこそ、それだけでキューーーーーンってなる。
完全に偏見であるが、京王線沿いに住んでるああいう風貌でああいう話し方ののやつらは、イヤホンのLとRを二人でシェアしただけで「音楽好きじゃないな」と言ってみたり、天竺鼠が好きだったり、大体面倒くさいやつ。※天竺鼠は最高の芸人です。
あのピンポイントでクローズドで、あの界隈のカルチャーを嗜む人間の集まりでしょ。
と心当たりもあり、自分の経験したカルチャー領域とは微妙にずれながら近しいカルチャーとあの甲州街道の景色に入り浸る時期を経験しているから、恐ろしくリアルに映る。
個人的には理想的な恋愛に見えてしまい、こんな彼らでさえ愛の温度はじわじわと下降していくのかと突き付けられた時、じゃあ自分はどうすればいいのかと絶望を感じる。
「やめてくれ。。」と終盤にかけて、勝手に自己嫌悪を感じながら反芻していた。麦くん、やめてくれよ。。

個人として、自分のモラトリアム時期に入り浸った景色を巡るタイムスリップロードムービー、
そして近しい匂いを感じる代表・麦くんの大人への道のりに伴う愛するカルチャーへの情熱の変化と、他人だからこそ影響をふんだんに与えてしまう恋愛の残酷さがとにかく胸に突き刺さる。
このモラトリアム的美しき情景として残る景色たちが、絹、麦の二人の変容とともに、また景色の見え方が変わっていく様が、自分の見てきた変化そのものにみえてしょうがない。
他人事としてはみれない身近さ、親しみやすさを感じるものの、心をえぐる攻撃性にまんまと傷つけられ、距離を置きたい、置かせてくださいという相反する気持ちが、この切ない気持ちを生んでるのか?
それを言葉にするとしたら、「大嫌いなんだけど、大好きです。」とこの映画に言いたい。
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