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花束みたいな恋をしたのmasayaのレビュー・感想・評価

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
4.6
 世界中の奇跡が2人を選んだかのような特別な恋の始まり。始まった瞬間に生まれる終りへの不安。予感に導かれるように、やがて恋は輝きを失う。2人は決める。始まれば終わるのが恋なら、私達の恋は終りも特別にしよう。主演のメジャー感に怯むのは勿体ない恋愛映画の傑作。
 恋はいつも特別に始まり当たり前に終わる。終わって月日が経てばただ懐かしいだけの記憶になるだろう。2人は輝かしい始まりの記憶を一生のものにする為の別れを選んだ。恋人達のテーブルは次の恋人達のものになり、そうやって時代は移ろう。青い時代の当たり前の恋だった。2人だけには特別であり続ける。

 現代に生きるすべてのサブカルオタクが妄想する恋愛シチュエーションハッピーセット全部載せの序盤に悶絶していたところで日常、社会、将来が一気に襲いかかる中盤。序盤の幸せワードが続々とゾンビのように甦って2人を刺していく。「大人になったんだ」と呟く目は死んでいる地獄。
 それにしても、ちょっとだけ出てくる人がいちいちすごかった。最後の方で次なる時代の恋人たちの役で出てくる女優さんにのけぞった。オーサムも。神が神の役で出てくるし。
 あと舞台が京王沿線でとっても懐かしく。明大前〜調布歩いたの?まじで?それもあの日の2人に惜しみなく与えられていた若さを引き立たせる、甘くてほろ苦エピソードになって帰ってくるからうまい、ズルい
 2015から2020年の時勢がそこそこニッチな部分でセリフに入ってきてたのもツボだったり。2010年代後半(割と最近だけど)に東京郊外で学生〜新社会人やってた人に見えてた世界がリアルに感じられた。
○イヤホンの使い方上手かったなあ。2人の内向性やこだわり、共通点の発見、シェアする喜び、贈る喜び、そして左右の聞こえ方の違いが意味するもの・・。

2021年1月30日
キノシネマ天神にて鑑賞

 どこにでもいる2人の、一つずつの恋が結ばれたこの4年間がなんと愛しいことか。ファミレスの場面はやはり凄い。息をすることさえ憚られるような精緻な演出、表情ひとつ見逃せない演技。あと一歩でたどり着いた未来も、決して戻らない現実も完璧に説明し尽くしていた。傑作です。まじで。
 序盤から結構飛ばす映画ではあるんだけど、終電逃してから2人でガスタンク劇場版観るまでの目くるめく一夜の疾走感に痺れる。実質4時間程度なのに2人の周りだけ12時間は用意されてたんじゃないかっていう恋の魔法にかけられた夜(かけたの押井守)。あの夜だけで無限に語れそう。

○美人同級生の登場で一旦膨らみかかった風船がしなしな萎むように絹ちゃんが盛り下がって、麦くんが追いかけて2人の気持ちが持ち直した瞬間「クロノスタシス」のイントロをテッテッテッテッって鳴らすのもう卑怯すぎるやろ、おれの心拍が跳ねる音かと思ったわ。

○「余韻に浸っていたい、こんな時に聴ける音楽があれば」→『残ってる』のことですよね?絹ちゃん残念ながら当時はまだ未発表。

○明大前でAM1:05の終電逃してから家族が出勤する時間に絹ちゃんが飛田給の自宅に帰宅するまでせいぜい6〜7時間。その間に3つの店を梯子し2時間の行程を歩き3時間超の大作動画を観る。明らかに時の流れが違うけど気にしない。夜は短し歩けよ乙女だって一晩で四季が過ぎて行ったではないか。

2021年2月6日
イオンシネマ福岡にて鑑賞
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