ジュリアン

花束みたいな恋をしたのジュリアンのレビュー・感想・評価

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
5.0
面白かった。

過去に親しくした人たちがライフステージの変化によって同質性を担保できなくなる事に自分は恐れと喪失感を抱いているんだなと気づいた。

並びに、何者でもない人間が文化的にゆとりを持つには資本主義社会で強かに生きなさいという冷笑さを受け入れた麦くんたちの姿勢を受けて、今の自分がキャリアを全く考えず、社会人生活は程々に趣味を充実させている事に恥ずかしさも感じた。休日に蓮實重彦読む贅沢さの裏には、不器用で生きづらさを抱えた麦くんたちもいる。

最後に、オタクたちが、不器用な生き方しかできない2人のカルチャーヘッズを非難しているのを見て悲しくなった。「この映画が腐しているような鼻に付くカルチャーヘッズと違って、俺は表層をなぞってない!ガチなんだ!」みたいな切れ方をしてシャットアウトするよりも他者理解に立って見たい。割と自分のことのように見た。

とはいえ、バリキャリ街灯を走っている友人たちとの同質性は後2、3年で途絶えるかもしれないが、変わりに蓮實重彦を読んだり、タコスパーティや家二郎を一緒にやる会社の同僚には恵まれている。

麦くんたちにも別れた後の始まりや繋がりは明るいのかもしれない(若干、友人たちとの同質性薄くない?え?と不安にもなるが。これはハリウッド映画が同性の連帯を描きすぎているせいかも)