監督の動画メッセージでも話していたけれど、最小限のセリフで映像のみでストーリーが展開していく。登場人物の感情の(わかりやすい表現としての)高ぶりがあまりないのだが、赤ん坊の泣き声にたいする一瞬の表情変化など絶妙な演出。
登場人物の映し方なども随所に工夫が見られ、単なるバストアップではなく、鏡を通してだったり、後ろ姿だったり、窓ガラスの中での動きなどで映していて観客として飽きない映像だった。
母親でポーランドから来たレナも、叔父の依頼を引き受けたエルマンノも目的なく生きていて、半ば自分の今の状況を諦めている様子だが、偽りの生活を続け、ひとつの命が生まれてから少しずつ変化が見える。ただそれが、どう見守っても幸せにはなれない感じも予想できるのが辛い。