140字プロレス鶴見辰吾ジラ

ダーティハリーの140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

ダーティハリー(1971年製作の映画)
3.8
【西部劇は死んだか?】

マグナム44。世界一強力な拳銃。この言葉を聞いたらダーティハリーの名場面を誰もが想起する。法治国家アメリカに生まれた矛盾に生まれた悪を吹き飛ばす西部劇から迷い込んだヒーロー。たがダーティと呼ばれる。劇場型犯罪が始まりそこから映画は動き出すが、今の刑事ドラマの骨格を成していながらも古き正義の思想を忘れぬ渋い1作に仕上がっている。露骨に見える悪と正義とその狭間にある法を見せつけながらどことなく空虚な音楽で引きのショットで締める本作は、西部劇的な銃撃の煌めきを持って陰鬱な連続殺人に終止符を打つ。犯罪者が法によって守られる矛盾に本音の正義で立ち向かうハリー・キャラハンの姿にダーティハリー症候群なんて名称を生み出したことも大きい。いささか犯人の顔芸が大仰に映るが、それが大袈裟であればあるほど法に守られてしまうシリアルキラーが、当時のアメリカ国民の本音を刺激したのだろう。冒頭のハリー・キャラハンのワイルドさと対になるクライマックスは、さながら西部劇の先に抜かせて先に必中させるガンマンの体温を帯びていた。西部劇は死んだか?と問うようなラストは多くの者の本音を呼び覚ましたことを納得させる。